『よっしゃ、到着!!』




うふふふふ、もうねー、いたずらしたくてしょうがないよね。


私は今、目的の部屋の戸の前に立ってます。



そんでもって、いたずらしに…いや、恩返しのために部屋へ潜入しようとしてる瞬間ですよ。




やべぇ、にやにやが止まらない…おっと、よだれが






『ふふふふふ…真っ赤になりそうだ、楽しみ!!』




ゴホン、と一回咳払いをしてから静かに戸に手をかけた。








(…お邪魔しまーっす)




とは言っても一応ここ私の家、マイホーム。


悪いことしても許されるんだから!!







…お、ぐっすり眠ってますねー。


顔が半分埋まってて寝顔はよく見えないけど、前に確認済みなんだよね!!!!





…それにしても、



(どんないたずらをしようか、)




さすがに、そこまでは考えてなかったわけで、少しだけ思考を巡らせる。




…うーむ、しょうがない










『添い寝でもするか、』

「やめぬか、馬鹿め」



『あれ、起きてたの?』





ちっ…折角その顔を真っ赤にしてやろうと思ってたのに起きたのか、政宗。




「お前の気配など外で良からぬことを考えておった時からわかっておったわ」

『えー、ばれてたー?てへっ』

「てへっ、ではないわ、馬鹿め!!それより布団に入ってこようとするなっ」





その手を離せ!!と思いっきり布団から手を引き剥がされたけどね、政宗なんか顔真っ赤…?嬉しそー。





「朝から盛るな!それでも一応嫁入り前の娘じゃろうが!!」

『盛ってなーい!!てか一応はいらないから、娘だから!!ぴっちぴちのっ!!

「ぴっちぴちの、とは言い過ぎじゃ、馬鹿め!!もうお前なんかガッサガサバリッバリの50代の肌年齢じゃ!!」

『酷い!!それは言いすぎだよ!言葉の暴力だよ政宗っ!!』

「わかった、わかったからもう少し寝かせてくれ…」




そう言って政宗は、また布団に潜り込んだ。





『やーだーって!!今日は政宗に恩返しする日なのっ!だから言うこと聞くからーっ、なんか言って!』

「では静かに寝かせてくれ、以上じゃ、おやすみ」


『うわぁぁああぁあん!!』





ちょっと!
お姉さん涙目ですよ、伊達男さん!!そんな恩返しは納得出来ないんだよー!!
馬鹿ー!馬鹿宗ー!!





政宗の横で泣いたふりをした。



…あれ、何か目から温かいものが…ってうわー、ほんとに涙出てきたよ。


本当に涙が出てきたせいで顔を上げられなくなってしまった。



暫く動けそうもない。




(どっどどどどーしよ!!)



予想外な展開。


そんな変な沈黙を破ったのは、眠りにはいったはずの政宗だった。







「っ…!!!!ええい、なんなのじゃ貴様はっ!」

『っうえ!?ひっ酷…ってうおう!!!?』





涙を拭って勢い良く反応すれば、強い力に引っ張られた。


…というか、引きずりこまれた。





『まっ…政宗ぇぇえぇ!?なっ、ななななな何して…!』

「煩い、黙っておれ!眠れぬわ…」

『…へ?』






気づいたら政宗の腕がしっかり私を抱き締めてて、




…うん、近い





『まままままさ、む、』

「じゃからうるっさいわ、馬鹿め!!添い寝したいのではなかったのか!?」




…え?






『えっと、でもさっき嫁入り前のーとか何とか言ってなかった?』

「本当に騒がしい口じゃな…塞ぐぞ

『ひっ…!?』





ちょっちょちょっ、っえ!?
いっ今、政宗の口から…うえ!?信じらんない言葉が出た気が…!




あ、目が本気ですね。
本気と書いて、マジのパターンだね、うん。
人殺せそうな目してるよこれ…何だろう、あれ、目が離せない…。





『まっ、まさ』

「煩いわっ!!」






その言葉の後に続いてきたのは、熱でして、




「ちっ…次はこんなものでは済ませぬからな…覚悟しとくんじゃな」





“それ”の後、唇が触れるか触れないかの距離でそう言い放たれた。


その顔は、年よりもずっと大人びていて…心臓の音が周りに聞こえるんじゃないかって心配になった。


政宗はそのまま三度目の眠りについたようだった。





(まっ政宗があぁぁぁあああ!!!)
(っ煩いわあぁあああ!馬鹿めぇえええ!!!)



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