『実は、みんなが私を元就達の世界に連れていってくれる、って言ってるんだけど…』

「ほう…?それは面白そうだな」




元就が少し興味を持ち始めた。




『でもね、向こうへ行ったところで私の居場所とか、存在とかなくなっちゃいそうで…でも私はみんなを、他の人達を向こうの世界で見てみたい!っていう気持ちもあって…どうしたら良いのかわからなくて…』




私の弱音。
初めて元就に溢した。





「…貴様はどうしたいのだ?」

『え?』


「貴様の気持ちで決めるものではないのか?」

『私は決められないの…迷いがあるから』




ふむ…と元就は呟いて、月を見ながら言った。




「では我から言わせてもらうぞ」

『へっ?あ、うん』

「これから我の世界では、大きな戦が起こるであろう」

『大きな、戦…?』

「魔王が何か動いているようだ。多分どこかの国へ攻め込むであろう。…その時貴様は堪えられるか?」


『…え?』




突然の元就からの投げかけに、驚いた。





「もし、自分がいる国に誰かが攻め入って来たら堪えられるか?生き残れるのか?魔王がもし攻め込んできたとなれば、貴様は必ず殺されるであろう。逃げ足も速くあるまい」




…確かに体力に自信はないし、あの信長となれば女子供関係なく皆殺しに決まっている。




「ここに居候しておる奴らも守ってくれるとは限らん…自分の事で手一杯になるに違いない。…それでも貴様はこちらに来たいのか?」




元就は真剣な眼差しで聞いてくる。




『…殺されるとか死ぬっていうのは、実感わかないけど嫌だと思う』

「その気持ちがあるならばこちらへは来ない方が良い…生きたいならばこちらの世で平和に暮らせ」


『でもね…元就。…私はみんなに与えてもらってばっかりで、何も返せてないの。
佐助や小十郎さんには家事を任せっきりだし、幸村には癒しとか…長政さまは良い親友っていう感じで、いつも元気くれたり相談のってくれたり…元親も政宗も真田さんも兼続も、伊達だって沢山の事や物を与えてくれた』




けど…私って何かしてあげれてたのかな?

私がそう言うと、元就はため息を1つついてから、こう言った。





「あやつらは、お前が居てくれるだけで良いのだと思うぞ?」

『…は?』



私は訳がわからなくて変な顔になった。(というか、なっている筈)




「あやつらは、貴様が傍に居るだけで十分楽しそうにやっているではないか」

『楽しそ…うえ?私が近くに居るだけで楽しそう?』


「あぁ、そうだ」

『目悪くなったの?』

「焼け焦げよ!!」

『冗談です、すいません』





元就は私の言葉を聞くなり輪刀を握る力を強めたが、すぐにゆるめてひとつ咳払いをした。





「まぁ、貴様はそのままで十分ということだ」

『そのまま…ねぇ』

「貴様が何かしようとすれば面倒事が増えると思うが」

『…おっしゃる通りです』




元就はあまり私と関わりが無い筈なのに、ズバズバと痛いところをついてくる。



「無理にせずとも出来ることを少しずつやっていけば良かろう」

『そうだね…』








冷たい夜風が吹いた。





『うぉっ…さぶっ!あ、元就。私温かいお茶でもいれてくるよ』

「その必要は無い」

『え?』



台所に行こうとした私に、元就は声をかけた。




『…っ元就、体が…』



元就の体は足の方から透けてきていた。




「そろそろ時間のようだな…」



元就が買い物袋を持った。




『もう、帰るの?』

「あぁ、貴様の淹れる茶など不味いに決まっているからな」

『ひっひどっっ!!』



私だってお茶ぐらい淹れれます!!




「どうやら力を使いすぎたようだな…」

『え?』

「会うのはこれで最後だ」

『うっ嘘ぉ!?』

「心配はいらぬ。会わずとも貴様のことぐらい分かる」

『あ、そうなんだ』



そんなことも解らぬのか、と元就に馬鹿にされた。




「では我はもう行く」

『…また、会おうね?元就』

「…フン」



あらら、やはりツンデレ女王様はツンツンが多いんですね。















「…また会おうぞ、遼」



『…っえ?』



元就は、消えると同時に私の名前を呼んでくれた。



『でっ…デレた!!』



私の感動する場所は、おかしいのかもしれない。



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