“おい、起きろ小娘” 『うぐぐっ…』 “おい、” 『うぬぅ…っ』 「起きぬか!馬鹿者め!!」 『い゛っだあ!!!?』 うぉぉぉぉ…っ!!!! 痛い…めっちゃくちゃ痛い!!!!!! 何かで叩かれて目が一気に覚めた。 『っ何すん…!!ってあれ?』 激痛と怒りに目を覚まして原因だと思われるものを見ると、そこには――― 『さっ、ささささサンデー様…!!』 何日かぶりのサンデー毛利様だった。 「貴様…まだその名で呼んでおったのか」 何故か不機嫌そうな顔をするサンデー様。 くっ口尖らせてない!? あ、気のせいか。 『え、ダメでした?なんなら呼び方変えますけど…』 「……で良い」 『はい?』 「元就で良いと言ったのだ!このうつけめ!!」 『い゛っ…!!!!!?いっいちいち叩かなくても良いじゃないですか!』 そろそろ禿げますよ!! 勿論私がっ! 「…今回貴様を呼び出したのは他でもない、呪いのことだ」 あ、私の意見は全面的に無視なんですね。 『おまじないをする日取りが決まった…とか?』 「いや、そうではない」 『へっ?…じゃあ、』 何で呼び出したんですか? そう聞くと、サンデ…元就は言った。 「貴様の世界で用意して欲しい物があってな」 『用意して欲しい物?』 うむ、と短く頷いた。 「確か…“こぉら”と“とけい”と“いろえんぴつ”と“魚の頭”だ」 『え、』 そっそそそっそんなにか? というかその物に何の共通点が…? 私には魔女が変なもので、変な薬を作っているような光景しか思い浮かばなかった。 『とりあえず、それを用意すれば良いんですね?』 「あぁ…貴様と逢えるのは2回が限界だ。近々満月の夜になるであろう?その時までにそれらを集めるのだ」 『にっ2回!?しかも満月って…!!っ急すぎやしませんか?』 「反論は聞かぬ。…次逢うまでに集めておけ。最後は連絡をとるのに使いたい」 『あ、はい』 「我の用件は終りだ。今からむこうへ戻してやる」 そう言うと、元就は右手に持っていたはたき?みたいな物を構えた。 『ちょっ…!!殴るとかダメですって!』 「…五月蝿い女だ。黙って目を閉じていろ」 『あ、じゃあこれだけ言わせて下さい』 「…何だ」 『私の名前は遼です。次逢うときは、ちゃんと名前で呼んで下さいね』 「…貴様の敬語が無くなれば、な」 『い゛っっ!!』 元就が言い終わると同時に思いっきりぶん殴られた。 『………………っ!!』 「うぉっ!?」 私は勢い良く起き上がった。 『は、れ?戻って…きた?』 「目ぇ覚めたのか!」 『あ、元親』 「随分と遅かったじゃねぇか」 『おっ、遅かった?』 私が元就と話していた時間は、5分程の短いものだった―――はず。 でも時計を見れば、何故か17時位になっていた。 (…さっき朝御飯食べた気がするんだけどなー) どうやら、あちらの世界は時間の流れが遅いらしい。 「ところでお前…かなーりうなされてたけどよぉ、元就に何かされたのか?」 『あー…二度程ぶん殴られましたとも』 「なっ…!!二度もか!!!?アイツ…帰ったらブッ飛ばす!!」 元親は、拳を握りしめながら言った。 「あ、遼ちゃん。おかえりー」 『ただいま、佐助』 佐助が飲み物を手にして入って来た。 「何かわかったー?」 『えっと…元就は私に用意して欲しいものがあるんだって』 「用意して欲しいもの?」 佐助が首をかしげながら聞いてきた。 『用意出来ないものではないから、きっと大丈夫だと思うけど…』 まぁ、なんでそれ?って感じの材料ばっかりだけど。 「じゃあ、明日からでもさっさと集めちゃおうか」 「そうだな!」 『うん…』 帰れる事が嬉しそうな風に佐助と元親は言った。 私が用意できるものと、元就の準備が整えば皆帰ってしまう。 (やっぱり私は…) 「…?どうしたの、遼ちゃん」 『う、ううん!何でもないよ!!』 伊達は私のことを連れて帰ってやる、とは言ってくれた。 …でも、私がむこうに行ったところで居場所なんかあるんだろうか。 今生きている世界だって私の居場所なんか無いのに。 皆だって一国の主だったり、それを支える大切な存在だ。 私なんか皆にとっては、本当に小さい存在にすぎないと思う。 帰ったら、戦、戦ですぐに忘れられてしまうだろう。 (何考えてるんだろう、私…最初から分かってた事じゃん。皆と別れることになるのは) 仕方ないんだ、違う世界の人たちなんだから。 そう自分に言い聞かせるけど、なんだか涙が出そうになった。 「…………」 (まーた何考えてんのかねぇ、この娘は) 独眼竜の旦那に連れて帰るとは言われてたけど…これは多分、良いことを考えてないでしょ。 俺様は、誰にも気づかれないように小さくため息をついた。 「…さっ、もうそろそろご飯の支度しなきゃ!!遼ちゃん、起きれる?」 『もう少ししたら行くね…だから、先行ってて?』 「うん…わかった」 「あんまり無理すんなよ?」 『ありがと…』 佐助と元親が出て行ったあと、私は誰にも気づかれないように声を押し殺して―――泣いた。 |