「あ、遅かったじゃん。浅井の旦那に遼ちゃん!」 居間に戻るとすぐに、佐助が話しかけてきた。 『長政さまがかなり無駄口をたたいてたからねー』 「無駄口をたたいていたのは、貴様であろう!!」 『なんだとー!?』 ムムムっと小さい子の様にお互い顔を見合わせながら、火花を散らす二人。 そんな二人をちゃんと落ち着かせながら、佐助は長政さまから袋を受け取った。 「遼どの遼どの!!」 突然幸村が話しかけてきた。 「遼どのは、何を買ってこられたのですか?」 『あ、そうだった!!』 端っこに寄せられていた袋の中から、先程選んだ服の入ったものをひっぱりだした。 『えーとねー…あった!幸村はこの二枚のTシャツとこのズボンを着てねー』 「おぉ、とても有難いでござる!!」 幸村に服を手渡すと、Tシャツを広げた。 「こっ…これは…っ!!ぅおやかたさ『ちょっ…声でかい!!』 とっさに幸村の口をおさえた。 「うぅ…あぁぁっ!!」とか言いながら、顔を真っ赤に染めていく。 赤くなるぐらいなら叫ぶな。叫ぶなら赤くなるな。これ鉄則な。 みんなに服を手渡して、着替え方を教え、居間に戻った。 『…あ』 長政さまも増えたんだった。 『なっ長政さま』 「何だ」 『後でまた長政さまの服も買いに行ってくるので、今はその格好のままで居てもらっても良いですか?』 「構わん。気にするな」 『ありがとうございます』 すると、みんなが着替えに入った部屋の扉が開いた。 「遼どのっ!!某、似合っておりますか!?」 …うっわ、かっこいい! そこら辺にいる男より、何倍もかっこいい!! 幸村は、お館様Tシャツと一緒に渡したジーパン生地の半ズボンを見事に着こなしていた。 …が 『ちょ幸村、』 「なんでござるか?」 『その鉢巻きだけは、とろうか』 そう、幸村は完璧に着こなしていたのにも関わらず、いつもの赤い鉢巻きをしていたのだった。 「なっ失くしてしまうでござる…」 そっ、そんな目で私を見るなっ…!!なんか申し訳なくなる!!!! 『じゃあ後で、幸村の武器に縛りつけておこう!!』 「名案でござるっ!遼どの!!」 一段とかっこよくなった幸村とキャッキャはしゃいでたら、また1人出てきた。 「なぁ遼、俺これどうやってつけんのかわからねぇんだが…」 もっもももっも、 『元親ぁああああっ!!』 「うわっ…おい!急に抱きついてくんな!!危ねぇだろ!!!!」 元親には、さっきのTシャツとダメージ加工がされているジーンズを渡した。 なっ…よくもあんなにかっこよく着こなせますな!! 「ちょっ…おい遼!!俺はこれのつけ方を教えてもらいにきたんだが…」 元親の手にある“これ”とは、ずばりベルトのことだった。 『分かった分かった、教えるよ』 そう言い、自分もベルトを持ってきて元親に私と同じ動作をさせることにした。 元親にベルトのつけ方を教えていると、また1人出てきた。 「遼ちゃん、服ありがとねー」 おいおい…あんなTシャツで喜ぶのか、佐助よ。 「いやー、あの忍っていうてぃーしゃつも良かったけど、この俺様伝説はスゴい気に入ったよー!!」 『そっ…それは何よりですー、あははー…』 …意地悪のつもりで買ったのに、気に入られちゃった! あの忍、センスおかしいんじゃ…?と思いながら佐助を見るが、やっぱり似合っている。 俺様伝説Tシャツに迷彩柄の半ズボン。 …あれ、着替える前とそんなに変わってない? 『そーだ、佐助!!髪の毛邪魔だと思うから、これ使って?』 そして佐助に、黒いバンダナをあげた。 「え、俺様に?あはー、ありがと!」 バンダナを渡し、つけ方を教えてつけさせた。 それを見た私の第一声がこちら。 『うわぁ…ラ●だ』 「いや、つくづく思うけど、誰なの?」 『気にしなくていいよ。独り言だから!』 「いや、めっちゃ気になるんですけど」 「…遼ー、次どうやるんだ?」 『わっ、ごめん元親!じゃあ続き教えるね』 「ねぇ、俺様ってとことん無視されるの?遼ちゃんの中では空気なの?」 『…それでここの穴に通して、』 「…こうか?」 『そうそう!!』 その後佐助が部屋の隅っこでいじけていたのは、誰も知らない。 そして、元親にベルトのつけ方を教え終わったと同じぐらいに残りの二人が出てきた。 「Hey!Honey、どうだ?俺は!!」 『はにー、ではないですが最高にcoolだと思いますよ』 何をもたもたやっていたのか、伊達と小十郎さんがやっとでてきた。 「Ha!!俺にホレただろ?」 『勘違いも甚だしいですね…やめてもらえます?そしてどこからくるんですか?その自信は』 「なんだHoney、照れ隠しか?まぁ…素直じゃないところも好きだぜ?」 ダメだ、この人。 服はかなり似合ってるのに口を開いた途端、台無しだ。 伊達は己のかっこよさを自慢するべく、幸村の所へ行ってしまった。 「おい、遼」 『はっはひっ!?』 ちょっ、小十郎さんにいきなり声かけられた!! しかも、名前っ…!!よびっ…呼び捨てっ!! 「…驚かせたか?」 『やっ!いえ、そのー…なんといいますか、小十郎さんに話しかけられるとは思いませんでしたし、あと…名前、しかも呼び捨てで呼んでいただいたので…嬉しかったんです』 うわー、自分で言っててめっちゃくちゃ恥ずかしくなった! 私は顔が真っ赤なのがバレないように、下をむいた。 「…おい、」 『は、い』 『むぎゃっ!?』 小十郎さんにー…いきなりほっぺつねられたよー。 『いっいひゃいれす、こじゅーろひゃん!!』 「人と!話すときは、相手の目を見て、って親から習わなかったのか?」 『へっ』 思わず間抜けな声が出てしまった。 「な ら わ な か っ た の か ?」 小十郎さんは私のほっぺをつねる力を、かなり強くした。 『いっ…いひゃい!いひゃいれす!!!!こっ…こじゅーろ、ひゃん、はなひてっ!!』 何を言おうとしてるのか、普通の人には理解できないような言葉でそううったえると、ようやく手を離してくれた。 『いっ…たたたっ…。もう!何するんですか、小十郎さん!!』 「お前がちゃんと人の目を見て話しをしねぇからだ」 『そっそれはすいませんでした。けどっ』 「…けど?」 『っひ!!』 こっ小十郎さんの目がっ!今めっちゃギラッて光った!! 「なんか…文句でもあんのか?」 『いっいいえ、ありませんでした。すいません…』 「…まぁいい。俺が言いたかったことはそういうことじゃねぇ」 『何か、私に…?』 「この着物、すまねぇな。ただの居候だっていうのに」 『そっそんな!!これから一緒に生活していくんですし、当たり前のことをしただけですよ!』 あははー、と笑いながら答えたが…やっぱり小十郎さんってスゴいなーと思った。 「…だが、」 『私が良い、って言ったら良いんです!!小十郎さん達は、私に沢山甘えて下さい!』 「…すまねぇ、恩に着る」 『いえいえ!』 小十郎さんの人がらが良く分かった瞬間だった。 |