「うわっ!?親房てんめ…!!」 「っ…!!親房…!?」 「親益叔父さん!?うわぁああっ!」 「あーあ、兄上が」 「面白いもの見…ぐう」 「信兄ざまぁみやがれ!」 あはは!!面白い面白い! だから飽きないんだよな、悪戯っていうものは。 ――――――― 父上が母上に手を出して俺が産まれたとか、そんなのは気にしなかった。どんな道であれ父上と母上の子になれたのが嬉しかったし、兄上たちと兄弟になれたのが誇りだった! 病弱でも親兄は「武勇に優れている」なんて言ってくれるけど、身体を気遣ってかあまり前線に立たせてもらえない。 …じゃあ俺はどこで目立てば良いのさ。そうして考えた結果がこの悪戯。みんな予想以上に驚いてくれるし、やりがいもある。 谷に怒られるのも兄上たちに怒られるのも平気。でも…一つだけ悔しいことがあるんだ。 「わあ!!」 『あ、親益様。お早いですね』 「…………」 そう、茅なの。茅は俺がどんな悪戯をしても絶対に驚かないんだ。一番度胸があるっていうか、何というか… 『どうかしました?浮かない顔して…』 「茅のせいだよ!何しても驚かないし、つまらない!!」 『あはは、ごめんなさい。何というかそんな体質みたいで…』 申し訳なさそうに笑う茅。別に俺はそんな顔をさせたいわけじゃないのに… 「まー良いや!!また新しいの考えるきっかけにもなるし!」 『それは安心しました』 さて、次は誰に悪戯しに行こうかなーなんて呑気に考えていたら、 「こほっ…」 『親益様?』 「ごっほごほ…っつ!」 『ち、親益様?!!!』 どうやら俺の持病の発作が起きたらしく、苦しい。俺はそのまましゃがみこんでしまった。茅は心配そうな顔で俺の背中をさすってくれる。 『だっ誰かいませんか!?親益様が―――』 「茅っ!!!!」 茅が誰かを呼ぶのを阻止する。もし兄上たちや谷や隼人が来たら、面倒なことになるから。 「俺は大丈夫…っ。もう、落ち着いてきたから…」 『でも―――』 俺は大きく呼吸を繰り返しながら息を整える。茅はとても困った顔をしていた。 「…っほら!!これも悪戯の一つだよ?新しいやつ!まだ茅にしか見せてないんだ」 ここまできたら開き直るしかない。口から出任せを言えば、茅はホッとため息をつく。 『本当に良かった…!!親益様に何かあったらと考えると、私…!!』 「…心配かけてごめんね?でも俺は親兄が天下を治めるまで…死ねないんだ!!」 今にも泣き出しそうな茅の頭を撫でてあげる。笑顔でそう告げれば茅も笑顔で返してくれた。 「親房がどうかしたか!!茅!!!!」 「大丈夫ですか!?」 すると貞兄と泰兄が血相を変えて走って来た……結局面倒なことになってしまった。 「何もないよーだ!ただ茅に悪戯してただけ!!」 『いや、違うんです!これは――』 「ほら、茅!逃げるよ!!」 『え、うわ…!!』 そう言うと俺は茅の手をひいて走りだす。 「あ!こら、待て!!」 「忠澄、そっちに行った!」 谷まで来てるなんて…これは逃げ切れないかも。 『親益様!走ったらまた発作が…!』 「だーかーらー!!さっき言ったよね?親兄が天下とるまでは死ねないって。だから大丈夫なの!」 いつも心配してくれる茅には感謝してるんだ。 俺は鬼ごとをする子供のように捕まらないように、逃げる。また発作が起きても茅がそばにいてくれるなら、大丈夫な気がする。 いつもの風景 (お前ら、弥九郎は捕らえられたか!?) (あ、親兄。遅かったな) (兄上様、弩九使って親房たちを追い掛けて下さい) (何を言っているのですか親泰様、屋敷が壊れます。親益様が心配なのは分かりますが冷静になって下さい) やっぱり一生失いたくない日常だ!! ――――――――――――――― 今回は親益。 元親は弥九郎と呼びます。 病弱らしかったのでこんなお話になりました。みんなに大切にされてます。てか病弱なのに武勇に優れていたって、尊敬します親益。 お付き合いありがとうございました! 2011.03.02 |