「茅ー、城下行かねぇか?」


「茅の膝…温かいしちょうど良い…」


「茅!!見ろよ、俺が釣ったんだぜ?」



――――心臓の辺りが、もやもやして気持ちが悪い。




――――――



「…ん?」


(あれは……)


見間違える筈がない。女はここに彼女しかいないのだから。


自室で書物を読んでいた。外の空気を吸うために障子を開けて庭を見れば、遠くに彼女―――茅の姿を見つけた。


(大変そう…)


岡豊の城やこの屋敷の侍女の仕事をある程度こなしながら、時によっては戦に出向いてその武勇を発揮する。過労で倒れないか、というのが一番の心配でもある。


父上が幼い頃に"姫若子"と呼ばれ、蔑まれた部分をどうやら自分が受け継いだらしい。男のくせに肌の色は白く、兄上や弟たちのように血気盛んな方ではない。

こんな自分でも、茅は一部の家臣とは違って至って普通に接してくれている。そんな彼女に惹かれていった。


「…ん?」


気がつけばいつもの如く、兄上と盛親に囲まれている。あのような光景を見る度に、己の心の臓がざわざわするのだ。


(…またか)

ため息しか出ない。"姫若子"とはそういうものであったのだろう、俺はあまり諍いごとは好まない。戦は疎か、喧嘩もだ。


もう一度だけため息をついてから、書物の続きを読もうと踵を返し障子を閉めようとすると―――


「和兄ー!!こっちこっち!!」


と、盛親の大きな声が聞こえてきた。振り返れば、千切れそうになるくらいに手を振ってくる盛親、会釈をする茅、笑顔でこっちを見ている兄上が。


「親和!!お前も城下に行くぞ!」


兄上は言いながら手招きする。するとこの騒ぎを聞きつけたのか、珍しく孫次郎が起きてきた。


『――あとは、親和様だけですよ!!』


茅が精一杯声を張り上げて言う。俺は面をくらった。少しだけ経った後、気づかれないように笑みを浮かべてみんなの方へ向かったのだった。



上手くえないけど、

(きっと俺は君のことがき)


この胸のもやもやは、そういう事だと思う。
でも、まだ気づかないように、気づかれないように、胸の奥にしまっておくことにするね。



―――――――――――――――


今回は、親和でした。
親和の恋心、とりあえず姫若子だから奥手だけどきっと元親よりは一枚上なはず。

お付き合いありがとうございました!!


2011.03.06



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