元親様がいないある日のこと。 親貞様の元には元親様のご子息が集っていた。親貞様は驚いていて、親泰様は何事もないかのように執務に取り掛かる。親益様は私にぴったり寄り添っている。なんだかよくわからない状況の中、珍しく親忠様が口を開く。 「ってことで、貞叔父さん」 「は?どういうわけ――――」 「父上の昔話してよ」 その言葉に書物に目を通していた親泰様もうとうとしていた親益様も目を見開いてご子息方の方を見る。 「あ――あのなあ、お前ら」 「良いじゃんよー、貞叔父さん?親父殿は自分から話そうとしてくれねぇし」 「そうですよ、叔父様。俺と父上のどちらが姫若子なのか―――はっきりさせたいのです」 困った、という風に頭をガシガシと掻く親貞様。助けを求めるような目で親泰様と親益様を見ますが、知らん顔で目をあわせようとはしません。本当に可哀想ですね…。 「なっ?頼むよー貞叔父さん!!」 「…っだあああもう!しゃーねぇなあ!!俺はどうなっても知らねえからな!?」 結局、親貞様が折れて話をすることになった。 ――――――――――――――――――― 「ちかさだーぁ」 「ん?親兄のこえ…」 振り向くと泣きながらおれに駆けよってきてサッと後ろに隠れる。また父上におこられたのだろうか。でもそのよそうは外れてこわそうな犬が走ってきた。 「わあぁああ…!!怖いよう、ちかさだぁあ!!」 どうやらおいかけまわされていたらしく、さらに泣きさけぶ親兄。ほんとうに外見も中身も女みたいで、父上の家臣たちがこちらを見ながらなにか話だした。 …あいつらはキライだ。親兄のことを何もわかってない。 「親兄、そうやってにげるからおいかけてくるんだ。ふつうにおれは敵じゃない、仲間なんだってことを伝ええればこいつも敵意をなくしてくれる」 ほら、と言いながらおれはその犬のあたをなでてやる。おもったとおり!そいつはしっぽをふってくれた。親兄もおそるおそる手をのばして触れる。ほらね、お互いの体温が伝わるでしょ? 「ほんとだ…」 「でしょ?」 その犬は満足そうな顔をしながら走りさっていった。 そんなにたたないうちに次は違う足音がする。 「さだ兄!!その顔でまた兄上さまのことなかせたの!?」 「さだにいしゃま、わるいひと!!」 犬のなきごえでさわぎを聞きつけたのか、親泰と親房がきた。 「ちがうぞ!おれは親兄をまもったんだ!!」 「うそですよ、絶対!そのこわーいかおで兄上さまのことにらみつけたんだ!!」 「やすにいしゃまのいうとうりだぁ!!」 いやいや、どんだけおまえらおれのことキライなんだよ。結構傷つくんだけど… そんなことをかんがえながらばつの悪いかおをしていたら親兄がおれのまえに出てきてふたりに言った。 「違うよ!ちかさだはおれを守ってくれただけ」 「兄上さま…」 ひさしぶりに親兄のつよい意志のこもったことばを聞いた気がする。 ふだんはうつむいて下ばっかりむいている親兄だけど、意志のつよいときは絶対に折れない。そのひとみはまるで父上を見ているかのよう。 「兄上さまがいうならしんじます」 「さだ兄しゃま、ごめんなしゃい…」 「いいよ、もうなれたし」 こんなつよい面をもっている親兄のことを知らないくせに、めめしいだのなんだの言っている家臣は絶対にゆるさない。親兄だっていつかは父上みたくなるんだ…!!! ――――――――――――――――――― 「まあなんつーか、俺が思うに親和より酷かったと思うぞ?お前の幼少期にこんなことなかったし」 「確かに…流石に俺もこんなことにはならないと思います」 「親父、よく西海の鬼って呼ばれるようになったな…」 「やっぱすげえな…親父殿」 これで改めてこいつらに親兄のすごさを知ってもらえたか? どん引きして性格がひねくれないと良いんだが…っておい、一番最初に話しきりだしたお前が寝ててどーすんだよ。しかも茅の膝の上って…つくづく羨ましいやつだな、親忠。 「ま、このことは親兄には秘密にしといてく――――」 「…何が、秘密なんだ?」 「「「あ!!」」」 『おかえりなさいませ、元親様』 「兄上様、おかえりなさい」 「おかえりなさい、親兄!」 それぞれのあいさつにおう、と一纏めに返す。やべえ…これは久々にブチ切れたか? 冷や汗が流れる。ユラっと親兄の周りの空気が揺れる。 でも予想もあの日と同じく外れて、その場に座り込んでしまった。 「そんな昔の話…恥ずかしいじゃねえかよ…」 顔を真っ赤にしながらそう言って頭を掻く親兄。 「いや、親父!俺は改めて親父のこと見直したぜ!!」 「俺もだ、親父殿!」 「父上の方が姫若子だったので安心しました」 「……ぐー」 「お前ら…!!!!」 親兄…良い倅を持ったな… 俺はいろんなことに安堵して大きな溜息をついたのだった。 実話 (お前らもイイ男になれよ!!) (兄上様、戻ってきて早々申し訳ないのですがたまっている執務…片づけていただけますか?) ―――――――――――――――――――― 昔話を息子'sが聞くっていうなんともアレなお話。 幼少期の時にひらがな多くて読みづらさMAXで申し訳ないです…!! ありがとうございました!! 2011.11.27 |