信親は見た目のわりにしっかりしていて、頼りになる兄のような人です。いつもいつも助けられていて感謝しているのですが…一つだけ問題があります。 「信兄ー!!!」 「うわあ!盛親様…おはようございます」 広間の掃除をしていたら勢いよく襖を開けて盛親様が来ました。いきなりのことすぎて私は少し声をあげて驚いてしまいました。 「お!おはよー茅」 にこにこしながら私に挨拶を返してくれました。 「何かありました?」 「ん?あぁ、ちょっと信兄探しててさ」 聞きたいことがあるんだ、と話してくれました。 そういえば今日は一度も姿を見てない気が… 「信兄ならさっき見たよー」 「「…うわあ!!」」 「忠兄!!びっくりさせんなよ!!」 「お、おはようございます」 おはよう、と欠伸を噛み殺しながら挨拶を返してくれましたが… 「たっ忠兄!茅の膝から降りろよ!!!!」 そう、いつもの如く親忠様は私の膝をいつの間にか枕にして寝っ転がっていました。 「良いのー、ここおれ専用だから」 「良くない!!」 すると親忠様が盛親様に何か耳打ちし始めました。 「だっ…!!!!?そ、そんなんじゃねえ!!」 「そんな真っ赤な顔で言われても説得力ないし」 けらけら笑いながらそうからかう親忠様。 …何を言ったんだろう? 「…まあ信兄を見つけるのに有効な手段が一つだけあるよ」 「どうすりゃいいんだ?」 するとまた親忠様が耳打ちします。 …気になる。 「ほんとにそれだけで良いのか?」 「うん。やってみな?」 「あ、あの親忠様」 「なに?」 「何をしたら良いんですか?」 そう聞くと親忠様は私の頭を軽く、くしゃと撫でながら茅は絶対に真似しちゃダメだよ?と、それだけ言って眠ってしまいました。 「あの、盛親さ――――」 私が盛親様に尋ねようとした瞬間、 「千雄丸うぅううううう!!!!!」 盛親様はそう叫んだ。 「…なんだ、いないんじゃん」 「え、あの」 「ん?何か忠兄がな、千雄丸って叫ぶと信兄がとんでくるって言っててよぉ」 すると、 「盛親ぁ…覚悟は出来てんだろうな…?」 今までに一度も見たことのない笑みを浮かべて、信親はそこに立っていた。 「あ!信に…お、おい、何でそんな顔してんだよ…!!気味悪ぃって!!!!」 徐々に盛親様の顔色が悪くなっていく。 すると瞬く間に信親は盛親様との距離を詰めて、胸倉を掴んだ。 「お、おい!!!!何なん――――――」 「お前今―――千雄丸って言ってただろ…?」 声はかなり低めで顔は下を向いているが、だいたいどんな表情かは雰囲気からとって分かる。戦場にいるときの信親と同じ気を纏っている。 「だっ、だったら何なんだよ!!」 もう盛親様も怒りを露わにしてそう聞くと、信親は多分これから一生拝むことはないであろう顔で言い放った。 二度とその名を、 (呼ぶんじゃねえぞ…?) (わ、わかったって!!つか、教えてくれたのは忠兄だっての!!!) ――――――――――――――― 何故か呼んで欲しくないらしいです← 2011.06.11 |