親泰様はとてもお優しい方で、私を気遣って下さいます。 …でも、 「おい弥七郎、ここにあった大福知らねえか?」 「さあ…?何も知りませんが」 どうやら親貞様がお出かけになる前にとっておいた大福がなくなっているようです。 親泰様は書物に視線を落したまま、そう返します。 「そーそ!俺と泰兄は書物読んでただけだし!」 親益様も続けて反論します。 「そうか親房、ならお前の口の周りの餡子をどうにかしてから嘘吐くんだな」 「これは餡子じゃないよ!ほくろだよ!!」 …これはきっと、いえ確実に親泰様と親益様が犯人のようです。 「おまっ…どの世界に取れるほくろがあるっつーんだ!」 「今ここにあるんですー!!」 「親房、貞兄に何を言っても通じる訳ないでしょう?馬鹿なんですから」 「…あ?」 あ、もしかして… 「おい弥七郎テメェ…今何つった?」 「どれだけ耳が遠ければ済むんですか?こちらの身にもなって下さい」 いつもの事なのです。 親泰様は親貞様に対して微塵も容赦しないのです。 そのせいでいつも喧嘩がたえません。 「いい加減その性格直さねえと、どっかの凶王サマみてえに人が寄り付かなくなるぜ?」 「私の心配より自身の心配をなさったほうがよろしいのでは?ただでさえその顔なのに…」 「そーだそーだ!!」 親益様加わってしまったらもう止めようがありません。 …というか、敵いようがないのです。 親泰様の確か…毒舌?に加えて親益様の追い討ち。 大抵の人は立ち直れません。 「…茅!!!」 「はいはい、大丈夫ですか?」 もう耐えられなくなった親貞様は私に泣きついてきた。 私はいつもの如く、背中をぽんぽんと軽く叩いてさしあげる。 「茅…お前は良い奴だな…本当に愛してる」 「え、え?」 親貞様はたまに本当なのか嘘なのかわからない様な事をサラッと言う。 その度私は戸惑ってしまう。 「ほら貞兄、早く茅から離れて下さい。気持ち悪がってますよ」 「茅!早く、こっちこっち!!」 「えっと、あの…え?」 「お前らも困らせてんじゃねえか」 結局、親泰様が私と親貞様を引き剥がしました。 そのまま腕の中に閉じ込められます。 「茅、貞兄はドの付く助平野郎です。迂闊に近寄っては駄目ですよ」 「あ、はい」 「助平じゃねえし茅も納得したように返事してんじゃねえ」 「あははー!どっかの本能寺の人じゃん!」 「あんな奴と一緒にすんじゃねえ!!」 親貞様と親益様のそんなやりとりを見て、楽しそうに頬を緩める親泰様。 こんな顔をしている親泰様は初めて目にしました。 …何だか今日は良い一日になりそうです。 輝いている (なんやかんやで仲良いんですね) (そんなわけないでしょう?茅、気は確かですか?もしや貞兄に何かされたとか…) (してねえわ!つーか弥七郎、お前もう少し兄に敬意を持て) (あは!貞兄の顔、今までに見た事ないくらい酷いよー?) ――――――――――――――――― 今回は一応親泰のお話のつもりでした。 親貞がいじられキャラなばっかりに…← 2011.03.25 |