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「うお館さぶぁああ゛あぁあ!!」

「ゆきむるぁあぁああぁああ!!」


『…お早うございます』


広間に着くと、毎朝恒例(…朝だけじゃないけど)の殴り合いが始まっていた。

お館様の武田信玄様、信玄様をお慕いして止まない真田幸村様。


そして――


「あ、お早うございます姫様」


幸村様の部下である、猿飛佐助様…このお三方と武田軍の兵士の方々に囲まれ、賑やかな日々を送っています。

私はあの事件の後、山本勘助様に拾われ、武田軍まで連れてこられました。

最初は、与えられた部屋に閉じこもってばかりいましたが信玄様を始め、多くの武将の方が接して下さりました。


信玄様は我が子同然の様に接して下さり、皆様から姫様と呼ばれるようになってしまいました。

穏やかな心や日常を取り戻せたのも、他ではない、武田軍の皆様です。
本当に…感謝してもし尽くせない限りです。


「…ごめんね、毎朝毎朝」


佐助様が凄く申し訳なさそうな顔で言う。


『いいえ…信玄様と幸村様がああやって居られると謂う事は、世が平和だと証ではありませんか』

「…まぁ、そうかも」


苦笑いしながら佐助様と顔を見合わせる。


「ちょっと俺様止めてくるね?」

『はい、宜しくお願いします』


佐助様は面倒臭そうな顔をして、仲裁に行った。


「おぉ、咲」

『勘助様!』


信玄様達を眺めていると、勘助様が部屋に入って来た。


「まだ食べておらぬのか?」

『えぇ…また信玄様と幸村様が殴り合いを』

「な…!はぁ、またか」


ため息をつきながら頭を抱える勘助様。

隻眼で片足が不自由ながらも、信玄様の為に軍師として尽くしていて、兵士達からの信頼も厚い。


「何か困った事などはないか?」

『大丈夫でございます。今の環境にとても満足させていただいてますので…』


そうか、と言って微笑む。


「では、私はこれで」

勘助様は自室の方向へと歩いて行かれた。


「咲様!!お早うございます」


幸村様が挨拶をして下さった。


『お早うございます。満足なされましたか?』

「はい!佐助にも朝餉が冷めると言われたので…」


あぁ、そういえば朝餉の時間でしたね。


『お早うございます、信玄様』

「うむ、朝から元気そうで何よりじゃ」


信玄様方には負けますけどね、と言えば笑い声で返ってくる。


私達は朝餉を食べ始めた。



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