「う…っ」


―――身体が上手く動かない。
俺様は、もう死ぬのだろうか。

大量の血の臭いがする。
旦那を逃がすために影武者になって、なれない二槍で戦って…
いつも使っている手裏剣とは違って小回りが利かないし、隙を沢山見せてしまった。



「はは…なっさけない」


ちゃんと旦那は逃げる事が出来たのだろうか。
傷を負っていたしすぐに見つかったのかもしれない。

――でも、少しの時間稼ぎにでもなれたのなら…


「…あ、れ?」



天から舞い降りてくる何か。

動かない身体を無理やり動かして、手を伸ばして掴もうとすれば、溶けて消えた。



「ゆ…き…?」


それは確かに雪で、はらはらと降ってくる。
素肌に落ちてきて冷たいのがわかる。


(…まだ感覚はあったのか)


でも…その冷たさも段々感じ取れなくなってきた。


―――終わりか。


俺様はあとどのくらいこっちにいられるのだろう。

身をまかせて目を閉じようとした時…



(佐助様!!)



…ふと、声が蘇ってきた。

とても懐かしくて、愛しくて―――


「何で…だろ…」


その声はどんどん溢れてきて、思い出がよみがえる。
その思い出には、決まった一人の女の子がいて、隣にいる自分も幸せそうで。


(んもー、どうしたの?―――ちゃん)


「―――ちゃ…ん?」


…あれ、何でだろう。

名前が聞こえない。
思い出せない。

あんなに大切だったのに。

あんなに幸せだったのに。


「…っ思い、出せよ…」


涙が零れて、溢れて止まらない。

思い出したいのに、もう一度だけ…その名前を呼びたいのに――


―――佐 助 様 



涙で滲んだ視界に、真っ白な雪の中に―――


「…なんだ、あんただったの、」


意識が途切れる前にその子の名前を思い出せた。


…ごめんね、約束守れなくて。


あんただけは…いや、どうかあんただけでも…





真っ白な世界で微笑
せめてこのりを



――――――――――――――――――――

最後は佐助。

佐助のこういうお話書くのは一番大好き。
連載ではあんな扱いなのにね…←


最後まで、ありがとうございました!
ご意見・ご感想などお気軽にどうぞ。


title:M.I様より「祈りの言葉」


2011.02.09〜





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