カランコロンと言う独特のベルの音を鳴らしながら扉が開く。店員さんのありがとうございましたーという声を背中に店からでた。店から一歩、足を出せば外はまだ5月だと言うのに、太陽は暖かみを越して少し暑いとも言える。俺と左門、藤内は腕に抱えている大事な品が悪くならないように速足で足を進める。

「にしても、いいのがあってよかったな、三之助」

左門が俺達の腕に抱えられている品を見ながらニパッと華やかに笑った。

「これなら作もきっと喜んでくれるだろうな」

「あぁ」

俺もつられて笑みを浮かべる。

「でも途中で藤内と会えたのはラッキーだったよな、私達だけではきっと花屋にすらつけなかった。」

「なんでだよ」

少しばかし後ろを歩く藤内を見ながらおお腕を振って歩く左門に俺は思った通りの疑問をぶつけた。

「お前らが方向音痴で迷子になるからだろ」

その疑問には左門の代わりに藤内が答えてくれた。

「左門はともかく私は迷子になったことはない」

「でたよ、無自覚な方向音痴。とにかく、花屋の場所くらい予習しておけ!」

「「……ごめん」」よく皆に口を揃えて言われるそのキーワードについには言い返せなくなってしまい、藤内の言葉に左門と揃えて返事をする他なかった。

「所で藤内はそれ誰に渡すんだ?」


藤内の腕に抱えられている品をみながら問いかける。あ、それ俺も気になった。と左門の問いかけるに便乗する。

「いや〜ここここここれはだなぁな、なんでもないアル〜!」

「どんだけ吃ってんだよ!つーか口調!口調戻せ、何処の万事屋のチャイナ娘だ!」

「…ととにかくお前らには関係ない!」

ようやくついた目的地に向かって藤内が呆れ顔でため息まじりの言葉を漏らす。

「ほら、やっとついたよ。たくっおまえらと歩くと1キロが5倍の長さに感じるよ。」

「すまん、すまん」

「ほんとにわかってんのか?」

「あぁ、勿論だ!」

「………ハァ、作兵衛の気持ちが痛いほどわかるよ…………ほらっ早く行ってきなよ、」

もう一度藤内にお礼を言ってじゃあ、いきますかと、勢いよくチャイムを鳴らす。するとダッダッダと騒がしい足音が聞こえてきた。はーい、とでてきたのは俺たちの本命の人で、どちら様で之助?左門?どうしたんだ?」


いきなりの事で驚いているようで予想通りの反応をみせてくれた。

とにかくほら気持ち気持ち、と無理やりながら先程まで品と呼んでいた真っ赤な花を両手に持たせる。

「なんだよ、この花…カーネーションかぁ?」

「作、今日は何の日でしょーか?」

「今日か?5月、第二日曜日で11日……?」

いい線で答えていく作に焦れったさを覚え最終的な答えを急かす。

「もしかして、母の日か?」

頬をピクピクと引き吊らせながら答える作。

「ピンポーン!もしかしなくても母の日でぇす!」

「通りで」

ほらあれ、と指をさされた先には自分たちと同じようなカーネーションの花束が二束ほどあった。

「あれな、午前中に孫や数馬が持ってきたんだよ」

「日頃の感謝を込めてとかなんとかって怪しい胃薬やら蛇の脱皮した革とかおいていきやがったんだ。」

「……そういえば藤内も」

この時ここまで送ってくれた藤内の姿が頭に浮かんだ。

「なあんだ、考える事は皆一緒か」

「?なんだ」

「作、後でもう一束届くよ」「誰から」

「まぁまぁそれは置いといて、」

「置いとくな!」

話題すかと言い終わる前に作の顔の目の前にズイッと品をだす。


「いつもありがとう、作!」「ありがとな、」

「三をする変える仕種をすると間髪入れずにツッコミを入れる作。だが俺と左門はあえての聞かなかったふり。

「お母さんいつもありがとう!」

感謝の意を込めて、二人一斉にギュッと勢いよく抱きつくと、いくら作でも二人を支えきれる力はなくてバタッと倒れる。

「無視かよっ!てかいって、押し倒すな!そして俺はお前らのお母さんじゃねぇ!」

この作兵衛の叫びが近所に響いたのは言うまでもない。

「皆もお母さんへの感謝を忘れずに、ね」「ね」

「お前らは誰に向かってしゃべってんだよ!」



END

(5束のカーネーション)




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