その日はとても暑い日だった。真夏の太陽の日差しがサンサンと地上に降り注いでいた。目の前の景色は蜃気楼のように歪んでみえるほどに。円堂のやる気ある掛け声も今となっては暑苦しいに分類されてしまう程だ。マネージャーが水分補給ですよー、と呼び掛けをした時にはもう時すでに遅し。俺の意識は途切れた。


「……暑い」


どれくらいの時間がたったのだろうか。意識を失い、気がつけば木陰ある芝生に寝そべっていた。驚き少し体を起こして回りを見れば、グラッと頭に響く。再度倒れ込めば、心配そうにこちらを除き込む豪炎寺の姿が視界に映った。


「…まだ動かない方がいい」

「豪炎寺、それ言うの遅い」

「悪いな。…気分はどうだ?軽い熱中症だとは思うんだが…具合が悪いようだと病院に行く必要がある」


頭が少しばかり痛むが、いや、大丈夫だ、と心配をかけないよう出来るだけの笑顔で答えた。熱中症。初めて聞く名前ではないが、自分がなるのは初めてだった。流石医者の息子だよな。確かに熱中症って処置が遅れると危険になってしまうものではなかったか、と未だはっきりしない意識のなか一生懸命に考える。


「ん、ドリンクだ。飲めるなら飲んだ方がいい」

「サンキュー」


途中までこちらに伸ばされたドリンクを持つ手。だが、豪炎寺は途中で何かを思い付いたように手を止め、自分の方へドリンクをサッと引っ込めた。

「豪炎寺?」

悪い、と謝る豪炎寺。どうしたものかと凝視している。すると、豪炎寺は俺のドリンクの蓋を開け、自分の口に含んだ。


「おい、それ俺のドリンク」


いきなりの行動に驚き、半開きとなっていた俺の口に豪炎寺は覆い被さるように唇を合わせてきた。当然、豪炎寺の口から俺の口へとドリンクらしき液体が流れ込んできた。予想もしていなかった出来事に俺は対応することも出来ず、液体はただただ俺の喉を通って体内へ侵入してくる。


「ゴホッゴッ…っなな何するんだよ!いきなり」


噎せ返る俺。イラつきを覚えキッと睨んでみるが、豪炎寺はそれほど気にした風でもなく、水分補給は大切だからな、とだけ答えた。

「だからって、ドリンクくらい自分で飲める」

「そうか、悪かった」


悪かったと口では言っているものの、きっと本心では全く思ってないだろう。満足気な顔が俺のイラつきをさらに増幅させる。

こんなキスは別に初めてじゃないが、熱のせいか顔が火照って仕方がない。熱い。熱い。あぁ本当、今なら骨まで融けてしまいそうだ。



END

(骨まで融かして)




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