もしこの世に神が存在するならば、どうか神様、あの人に幸せを。他はもう何も望まないから。どうか、神様この望みを。



「君、今、何て言ったの?」


照美さんの表情を著すほどのボキャブラリーを、僕は残念ながら持ち合わせていない。あえて今の状況を著すなら、亜風炉照美さんは混乱している。


原因は俺。理由はいつも通りに練習を終えて、帰路についてる中、俺が隣を歩く恋人になんの前触れもなく別れを告げられたから。


別れましょう。そう別れを切り出したものの、その一言を言ったきり俺は口を開けず、何も話そうとはしない。否、話せなかっただけ。何故なら俺も照美さんも、隣にいる恋人の様子を窺うのでいっぱいだったから。


「理由を聞いてもいいかい?」

「……俺が男であって、女性ではないからです」


照美さんが聞いてきた質問に、俺はやっとの思いで答えた。きっと今の俺の声は思いの外上擦っていて、照美さんもそれに気づいただろう。しかし照美さんはそんなことはあまり気にしていない様子で、話を進めてきた。


「女性ではないことは、告白をOKだと返した時点で承知の上だよ」

「……………」

「僕は女性とか男とか、性別を関係なく、君が好きなんだよ?君だってそれを考えて、僕に想いを告げてくれた。」

そうだよね?と真剣に、強気を帯びた瞳で俺を真っ直ぐに見つめてくる。耐えられなくなった俺はそっと視線を下へと剃らした。当たり前です。そう伝えようと小さく口を開くが上手く言葉がでず、また閉じる。そして再度口を小さく開けて小さく呟く。


「…別れましょう」


その方が、いいから。貴方が幸せになれる俺が考え出した方法。嗚呼俺はやっぱり俺は意気地無しだ。また総介やチームの皆に笑われてしまうだろうなこの人の顔 ちゃんと見れない。あれだけ考えたて、沢山練習のに、どうして上手くいかないんだろう。


「なんで、君が泣くんだい?フラれた僕の方なのに可笑しいな」


少し背を屈めて目線を合わせ、優しく笑った照美さん。気づかないで溢れ零れた涙は、止まる事を知らない。そんな俺を照美さんはそっと抱き寄せてきた。


「君は本当に面白いね。本当の理由を聞いてもいいかな?」

「俺は、男なんです。胸だって、ないんです」

「当たり前。知ってるよ」

「何より俺はまだまだ子供で…照美さんとは不釣り合いだってずっと悩んでました」

俺が照美さんの幸せを奪ってたんだ。ぽつり、ぽつり。嗚咽に混じって紡がれる言葉に、照美さんはうんうんと相槌をうちながらいきてくれた。男同士で世間から冷たい目で見られながら生きるより、一般の女性と一緒になり未来を築いてほしい、そう幸せを願ったのに照美さんは一瞬にで俺の決心を覆す。

「君はとっても優しい子だね…大河。…君が本当に僕の幸せを願ってくれるなら、これから先ずっと僕の傍にいて欲しい」


傍にいます。きっと離れてといわれても離てあげられないだろう。貴方の幸せは神様ではなく俺が叶えたい。



END

(願う者から叶える者へ)




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