※捏造



これはクロスウォーズに集合した歴代の人物である、僕たちのもう一つのお話。

それは突然の出来事だった。

太一さんと休日を過ごしている時の事、僕のパソコンに一通のメールが届いた。送り主のアドレスは僕の知らないもので、不審に思いつつ慎重にメールを開いてみた。すると、そこには目を疑うような事が書かれていた。


「た、太一さん、起きて!」


いつの間にか漫画を枕に寝ていた太一さんを叩き起こし、これを見てくださいと、パソコンを指差した。

「何だよ…光子郎」

どうやら、まだ完全に意識を覚醒させていない様子で、少し怠そうに半開きの目を擦りながら起き上がる太一さん。

「メールです」

「メール?…俺にか?」

「えぇまあ。でも、正確に言うと…この前の夏、選ばれし子供たち全員にです!」

何っ!?と一気に目を覚ます太一さん。その顔は少し焦っていて、でも何処か楽しそうな顔だった。その気持ちは僕にとっても理解出来るものだった。だから太一さんの心情もよくわかる気がする。


「いいですか?文面の内容を簡単に言うと、これが送られてきたのはここではない別世界からのメールです」

「…別世界」
太一さんの言葉にはい、とだけ答えは話を進めた。

「僕たちのいるこの世界ではない。また違ったデジモンの世界。その世界に危機が訪れていて、その危機を救うべく、僕たちの様に世界を救った英雄や選ばれし子供たちに助けを求めてきているんです」


僕が説明を終えると、太一さんは成程な、と考えるように手を顎に当てた。正直、僕もこのメールについては頭を悩ましている。第一このメールに書かれていることが本当のことなのか、まずそこからが疑わしい。

「よし、決めた!俺は行くぜ!」
「えっ!本気ですか!」

頷くき無邪気な笑みを見せる太一さん。その瞳は輝いていてそして固い決心をしたような真っ直ぐとした視線。そんな太一さんを僕が止められないのはわかっていること。


「はぁ…わかりました。僕があちらの世界へのルートをつくり、誘導します」

「光子郎…あぁ!頼むぜ!」


空さんやヤマトさん、他の皆さんは後から連絡を入れるとして、まずは太一さんを送り込む準備をする。カタカタと規則正しい音を刻む僕のパソコン。ルートは思っていた以上に簡単に開いた。


「……開きました!後はテントモンに任せています。アグモンともそこで合流出来ます…ルートが繋いでおく人物が必要なので、僕は行けませんが…」

「わかった、サンキュー!…光子朗、」


最終調整で動かしていた手を不意に止め、まだかまだかと落ち着きの無い太一さんに声をかけた。

「ん、何だ」

「気をつけて、いって下さいね」


背を向けているから僕から太一さんの顔は見えないし、太一さんから僕の顔は見えない。ただ太一さんの動きが一時的に止まったのは気配でなんとなくわかった。


「なんだ、心配してくれてんのかよ!」

クシャクシャに僕の頭を撫で回す太一さん。

「や、やめて下さい」

心配なんて当たり前。だって知らない所に未知なる場所に最愛の人をおくるんだ、心配しないわけがない。

「お前、俺を信じてないのかよ?俺は八神太一だぜ!一人じゃ何も出来ないかもしれない…けど俺には…いや俺達には仲間がいるんだ」


絶対帰ってくるから、心配するな、と抱きしめなれた。目に涙が溜まるのがわかった。けれど今の僕に泣いている暇はない。ぐっと腕で涙を拭い、抱きしめてくれている太一さんからそっと離れた。


「太一さん」

「後の事は頼んだぜ」

「はい」

いってらっしゃいの言葉を遮るように額に太一さんの唇が当たった。驚き、条件反射で目を瞑る。そして太一さんの唇が離れたのがわかりった。


「いってきます」


次の瞬間目を開れば、既太一さんの姿はなく。僕は誰もいないなかいってらっしゃい、といった。僕は僕のやるべき事がある。もう一度涙を拭い僕は部屋を飛び出した。




END


(もう一つのお話)





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