泉光子郎小四の夏。あの長くも短い夏が終わり……皆がそれぞれの生活へと戻っていった。けど僕はこっちの世界へ戻ってきた事に時々後悔を覚える。夏休み明けの新学期が始まって数日がたったある日の放課後。自宅までの帰り道にてある人を目にした。

「………太一さん。」

目にしたのは正確には、太一さんとその友達だろうか僕の知らない人が二人。じゃれあいながら帰っている太一さんの顔から明るい笑顔が絶えない。僕はこの時、胸が痛むのを感じる。

太一さんの周りに僕の知らない人がいる。そんなの当然の事なのになぜかそれが許せない。なんだかそんな自分が情けない。そう思うと太一さんに合わせる顔がなかった。そこで僕はあえて脇道へと、それようと考えた。けれどもそれは叶わなかった。

「おーい、光子郎!」

太一さんが友達と別れ、僕の名前をよびながらこちらへと駆け寄ってきた。僕はどうしようもなく、とっさに太一さんに背を向けた。


「光子郎、お前人が呼んでんのに無視して後ろ向く事はねーだろ。」

「す、すみません。別に深い意味は……」

「光子郎…?お前何で泣いてんだよ。」

「……え?」

太一さんに言われて初めて涙の存在に気がつく。僕は頬を伝う涙を自分の服の袖でゴシゴシと強く擦り、拭った。

「別に泣いてなんか、……ありません。」

でも、何故かいくら拭っても拭っても僕の涙が止まる事はなかった。

「やめろよ、光子郎。そんなに強く擦ったら腫れちまうぞ。こっち向けよ。」

「い、いやです。」

「いいからこっち向けったら」
「嫌です……。今、今貴方の顔を見たらますます堪えきれません………。」


いきなり肩を捕まれ、強引に向き合う形とされ、きつく抱きしめられた。


「すみません、太一さん。涙……やっぱり…止まりません。」

「何言ってんだよ光子郎。俺の前では泣いたっていいんだぜ。」

「太一さん…………。」


あぁ駄目なんだ。僕がどんなに強がろうとこの人の前では、自分の弱さから逃げる事ができない。



END


(僕の弱さ)





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