俺は毎朝同じく繰り返される目覚ましにおこされる。手を布団から生一杯伸ばし、目覚ましを止める。いつもならここで起き上がり、んーと、天井に向かって手をのばすんだけど、今日はちょっと違っていた。

だるい。

風邪でとかではないんだけど、なんかだるい。どうしてか何もやる気が起きなかった。

「太一?」

ガチャと控えめにドアがあけられる音と共に聞こえる、母さんの声。いつもなら起きてくる時間と心配してきたのだろう。俺は返事を返さず布団を頭まですっぽりと被せた。


「太一?寝てるの?起きないと学校に遅刻するわよ。」

「行かない。何かだるいんだ。」

「だるいって体が?…大丈夫なの?熱とか……病院行かなくて大丈夫?」

「別に……だるいだけだから」

ひねくれたガキみたいに素っ気なく答え、勝手に話を進める母さんにはあえて突っ込まずだるいとだけ答えた。

「そう?母さんこれから出掛けなきゃ行けないのよ。一人で大丈夫?」

「あぁ」

「そう。………じゃあ行ってくるわね?」


それから数十分後。玄関のドアがバタンと閉まる音が聞こえた。母さんが出掛けたようだ。そして、今まで中途半端に開けていた目を俺はゆっくりと目を閉じた。今寝たらねたら、一緒眠っていられるような気がした。そんな考えを廻らせながら、俺は意識を手放した。




長い夢をみた。それはあの夏と同じ光景。でもあの時とは違って不安とか辛くて苦しいものはない。皆がただ楽しくキャンプをやってるんだ。今は皆忙しくて、8人全員が集まるって事はまずないし、ましてやキャンプなんて。あぁこの夢がこの時間が一生続けばいいのに思った。


だけど、そう思った途端に周りが真っ黒になった。集まった皆が俺の前から一人また一人って消えて行く。俺は1人ぼっち。気がつけば意識は現実に戻ってきていて、目が覚めていた。

目を覚ました時、どれくらいの時間眠っていたのだろうか。時計の針は丁度昼の12時をさしていた。冷や汗のせいで、少し体がべたつく。

着替えようかと、布団から起き上がると、家のインターホンが鳴る。物音がしないところをみると、母さんはまだ帰ってきてないみたいだ。しかたがなく、俺がでた。パジャマとして着ているこだれたジャージだが、この際しかながない。

「はーい、どちら様ですか?」

ガチャとゆっくりドアを開けると息をきらした光子郎の姿があった。

「こ、光子郎!?ど、どーしたんだよ!汗だくで……」

息があがっているのせいで光子郎はすぐには俺の問い掛けに答えなかった。

「…す、みません。走ってきたものですから」

「なんで!?」

「太一さんが休みだと、ヤマトさんから聞いて…それで何か嫌な予感がして…」


ようやく息が整ってきたのか、頬を伝う汗を腕で拭いながら答える光子郎。そんな光子郎に罪悪感を覚えた俺は目をぐっと閉じながら話す。


「わりー、今日休んだのは別に風邪引いたとかじゃなくて、ただ……なんだろ上手く説明出来ないんだけどさぁ、今日は学校に行きたくなかったんだよ。

「えっ…!なんでまた」

「一言でいえば、ただたんにだるかったんだ。悪い。光子郎、変な心配かけちまって……」

「な、なんだ……」

「光子郎!!!?」

俺の言葉を聞いて光子郎がヘナヘナと力が抜けたように地面に座りこむ。安心したのか呆れているのかさっきまで強張っていた顔が緩まっている。

「お、怒んねーのか…?」

「別に怒りませんよ。でもよかった太一さん、何ともなくて」

「……光子郎……。」


こんなあまりにも可愛い事をいうものだから思わずギュッと抱きしめた。きっと午後の授業をサボってこちらに走ってきてくれたのだろう。でなければこんな早い時間にこられるわけがない。それを考えるとますます嬉しくなり抱きしめる力が自然と強くなった。

「く……苦しいです、太一さん。」

「あ、わりー、でももうちょっとだけこのままで………」

春独特の暖かい日差しが俺達を優しく包みこみ春の匂いを乗せた風が俺の頬を撫でる様に流れる。この風と共にあの悪夢もどこかえと流れおれの頭から消えていくのを感じるた。



END


(春風と悪夢)





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