真っ青な空が広がる昼下り。だが、今の私から見た空は綺麗に丸く切り抜かれていた。この状況をなんとか切り抜けようと考えるが、いい案が思い浮かばずその度に渇いた笑いだけがでてくる。 情けない話、私は今綾部の掘った穴にはまっしまい出れない状況。上級生である五年生として情けない話だ。穴があるならば入りたいくらいだ、と考えるが私はすでに穴の中だと気がつく。 「綾部め、今度あったらただじゃ、おかない」 「おやまぁ、久々知先輩発見」 穴の上から聞き慣れた声がして、上を見上げれば私を穴に落とした張本人の綾部が対照的にこちらを見下ろしていた。 「綾部!そんなとこにいないで助けてくれ!」 「自分で上がってこれないんですか?」 「道具を部屋においてきてしまったんだ」 綾部はおやまぁ、と驚いたよう言葉を発する。 「先輩でもそんなミスをすることがあるんですねぇ」 事実なのだが、遠慮というものもしらず痛いところをついてくる後輩。だが、今の私を助けられるのもこの後輩をおいて他にいないのもこれまた事実。 「綾部、鋤だ」 「!!?(好きだ!!?)いきなり何ですか!」 俺の言葉に顔を赤く染める綾部。何に対して赤くなっているのか俺にはよくわからなかった。第一この言葉はあいつにちゃんと届いているのかさえ疑わしい。ふるふると震え反応がなくなった綾部。鋤を渡せと言ったのに、私の手元に鋤が降りてくる気配がない。 「先輩ー!上がってきたらチュウしてください!」 「?(上がる時注意してください)もちろんだ。」 この会話の後に私は綾部によって救出された。だが、穴から上がりきると綾部の様子が何処と無くおかしい。頬を真っ赤に染め、チラチラとこちらに視線を送ってくる。 「それじゃあ約束通りお願います」 「なんのことだ?」 「キス!接吻ですよ!」 私自身そんなもの約束した覚えはない。いつ約束した、と綾部に問えば、さっきしてくださいってお願いしたらもちろんだ、っていってくれた。好きだとも言ってくれた、と少し興奮気味に話す。 私は自分の顔から血の気が引くのを感じた。私はそんなこと一言も言ってないと、胸のうちでひたすら否定するが、上手く口にだすことができず。私はただただ手を顔の前で振るしかできなかった。 「言ってないから〜」 漸く出た言葉。これを最後に私はそこから抜け出した。そして私は、人の聞き間違えとは物凄く危険なものだと改めて思い知ったのだった。 END (それは聞き間違え) |