「ねぇ、土方さん」

「嫌だ!!」


「何で〜」

「嫌だから!」

「……」


俺らはもう30分もこの言い合いを繰り返している。


発端は俺が言ったささやかな願いだった。


ー俺達の関係を公表しましょう…



もう3ヶ月も前から俺達の特別な関係は始まっていて、でもそれは誰にも気付かれていない。


普段は今まで通り喧嘩もするし、俺は彼の命を狙ったりする。

2人きりの時間はその分とても貴重で、手も繋げるしキスだって出来る。


真っ赤に染まった土方さんの顔を独り占め出来るのは本当に幸せな事。

だけどね…知られてないっていうのにも結構問題があるんでさァ。


土方さん自身は気付いてないようだけど、案外あの人は人気者で女からはもちろん男からもアプローチの嵐。


最近は隊の連中や万事屋の旦那までもが土方さんをモノにしようとしている始末。


別に土方さんが取られるんじゃないかとか思ってる訳じゃない。


この人が俺に夢中なのは普段の行動一つから取っても一目瞭然なのだから。


だけど土方さんは俺のモンなんだってわからせてやりたい。


どうしても……

「ねぇ、土方さん。俺が仕事サボって何してるか知ってますか?」

ききなり話題が変わった事で頭に疑問符を飛ばしながらこちらを振り返る。


「知らねぇよ。」


「俺はね…病院に行ってるんでさァ。」


「………病院…。」


「ええ。今はまだ平気ですがね、これから先どうなるか分からないんでさァ」

「…そんなに悪いのかよ?」


土方さんはとても心配そうな表情を浮かべる。


あともう一押し!!


「だから、いつでもあんたの恋人として側にいたいんでさァ」

「総悟……」










こうして俺達は手始めに近藤さんに事実を伝える事になった。

すると意外な事に近藤さんは喜んでくれた。


「トシ〜、幸せになれよ〜!!」

それを言われ苦笑する土方さん。


でも、あとの連中は口では俺達を応援してるだの言いつつ、全員がっくりと肩を落としていた。


「〜〜〜♪」


「なんだよ…やけに機嫌がいいじゃねぇか」

ここまで作戦が上手く行くとは…


ああ、あいつらの悔しそうな顔を思い出すだけで顔がにやけてしまう。


「なあ総悟。近藤さん達に病気の事話さなくていいのか?」


あっ……。………やべぇなこの状況。

俺は持って来ていたアイマスクを装着してその下で大いに焦っていた。


「心配すんなよ。てめぇはそう簡単に死なねぇって!」


ーだって

「俺を殺すまでは死なないって言ってただろ?」


ー俺はてめぇなんかに殺られるつもりは一緒ねぇからな。

「死ぬなよな」


真剣な声で、でもとても切なくて。


「土方さん!!」

「うわ!」


俺は堪らなくなってアイマスクを放り投げると土方さんを抱きしめた。


「ごめんなせェ!」


「はっ?…何で謝るんだよ。馬鹿だなてめぇは!」

「違うんでさァ!」


そうして全部を打ち明けやした。
伝えてる間胸がキリキリ痛んでた…。

「はあ!?」


「だから、すみませんでした…。」

嫌われちゃいやしたかねィ…。
そう思って不安になりかけた次の瞬間強く抱き返された。


「土方さん?」


「馬鹿かてめぇ…」


その力が強くて少し苦しい程だったけど、その分土方さんの思いが伝わって来た。

俺の笑えない冗談を真に受けて、本気で心配して苦しんでたんですね。


「本当ごめんなせェ」


「もういい」


そうですか?といつもの口調で言いながら土方さんの両肩に手を添え身体を離して向き合った。

「幸せにしてやりやすよ。」


「フン、当たり前だ!」

嬉しそうな顔をした土方さんに口づけしながら俺は誰にともなく誓いやした。




もう二度と…


ーこの人を悲しませる真似はしない…



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