学校特有のチャイムが鳴り響き、午前の授業の終わりを告げる

縮こまった体を伸ばす者、昼食の弁当を広げる者、友人との会話に盛り上がっている者、一瞬にしてクラスは賑わう

そんな中、周りの雰囲気とは違うオーラを放っている者が一人

現在高校二年生の沖田総悟だ

特に何をする訳でもなく、いつも以上のポーカーフェイスで机に伏せている

「沖田さん、大丈夫ですか?」

元気のない沖田を心配してか否や、声を掛けてきたのはクラスメートの山崎退

山崎の問いかけには答えようとした所で、バイブ音が鳴る

携帯を開いて見ると着信の文字"土方十四郎"


名前を見た瞬間、沖田の中で苛つきは高まっていく

「なんでィ、あの野郎」

開いた携帯を閉じ、ポケットにしまう

今は声すら聞きたくもない

「まだ仲直りしてないんですか?」

「…あいつが悪いんでィ」

椅子の背もたれに寄りかかるように座り直し、懈そうに天井を見上げる

そもそも土方が悪いんだ

.
部活中の些細な出来事

沖田と土方は恋仲の関係になり、その日は久しぶりに二人で出掛ける約束をしていた

偶々、偶然が重なり土方は近藤の代わりに大会の抽選会に行くことになったのだ

会場が遠い為に、当然約束も無くなってしまう訳で沖田は土方に文句を言った

それに対して土方は酷く冷静だった

「仕方ねェだろ」

土方の一言で沖田の中で何かが切れた

「だったらさっさと行けよ、土方コノヤロー」

本当は困らせたくない

大事な用だど分かってはいても折角の約束が無くなるのは気に食わない

「あぁ?んだとコラァ!」
便乗するように怒りを現してきた土方は言い返す

「アンタなんて知らねェでさァ」

「だったらお前みたいな馬鹿とは二度と出掛けねェよ」

「自分から破っといてなんなんでィ」

いつの間にか暴言が止められなくなり、言い合いが続くと近藤が不在の為、山崎が止めに入った

「アンタらいい加減にして下さいよ!一年も怖がってるでしょう!」

山崎の制止に二人の上がっていた熱が下がる冷静になった沖田は山崎を連れて帰ってしまった

こんなの部活に対するただの嫉妬だ

未だ手に握られている携帯はブルブル震えている
.
相手は変わらず土方だ

溜め息を一つ零し、再び机に伏せようとすると女子の黄色い歓声が上がる

現況を確かめる為に声の聞こえる方を見ると、悩みの種の土方が居た

「沖田さん、土方さん来てますよ」

同じく土方の存在に気がついた山崎が沖田に耳打ちする

「…何で来るんでィ」

こうなったら無視してしまおうと決めた沖田は土方が教室に入った反対のドアから廊下へ出た

屋上にでも行こうと階段を昇ろうとした時、腕を掴まれた

振り返らなくてもわかる

「総悟、待てよッ!!」

掴まれた腕から土方の手を無言で払い睨みつける

睨んでも全く動じず真っ直ぐ目を見てくる土方に戸惑う

「総悟、話があるからついて来いよ」

「何でアンタの言うこと聞かなくちゃいけねェんでさァ」

反抗的な態度に加え、目線も反らすとまた土方に腕を掴まれる

「…いいから来い」

抵抗する暇すら与えられず、沖田は引っ張られるままに歩くたように、仰向けで倒れた

やけに空が蒼い

「今日は怠いからこのままサボっちまうか」

「はは、そうですねィ」

そう言って笑う二人の手は固く結ばれていた

end


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