『はじけた甘酸っぱいなにか』
ぽかぽかと麗らかな日差しが降り注ぐ庭で、見回りをサボって昼寝と決め込む。
山崎が俺を探している声が聞こえてるが、無視だ、無視。
今、寝ている所からは枝の間から、土方さんの部屋が見える。
土方さんは窓を開け放して仕事をしているため、その姿は丸見えだ。
だけど、俺の姿は植木があるため見えない。
気配を消していれば土方さんに見つからないだろう。
昨日は色んな事情があって、寝ずに戦っていた。
おかげで、俺の意図したことは成し遂げられたが、その代償にこの睡眠不足だ。
このことは土方さんも知らないから、今日も普通に仕事がある。
「副長、沖田さんを知りませんか?」
「あ?またサボってんのか。」
探しても見つからなかったからか、山崎が土方さんに問いかける声がした。
それに土方さんがタバコをくわえたまま答える。
「探してるんですけど、見つからないんですよ。」
「そうか…。」
ちらっと土方さんがこっちを見る。
見つかったのかもしれない。
「誰か他の奴を連れて行け。総悟は俺が探しておく。」
土方さんがそう言うと山崎は嬉しそうに去って行った。
いつもなら見つかるまで探せって言われるのに、今日は違ったからだろう。
土方さんが部屋から出て俺に近づく。
とっさにいつものアイマスクをかぶって寝たふりをした。
「総悟、あんまり無茶してくれんなよ。」
いつもの土方さんとは違う柔らかい声。
本当に俺を心配しての言葉だとわかる。
「まったく、今回だけだからな。」
サボりを見逃すのは。
そう言って柔らかい手つきで俺の頭を撫でた。
いつもなら子供扱いするな、と思うところなのに。
どうしてか胸が痛くなった。
END