おんなじもん食っておんなじとこで育ったはずなのにどうしてこんなに違うんだ。身長とかホクロとかメガネとか。あまつさえ顔なんて双子なのにも関わらず全然違う。悔しいがアイツのがモテる顔をしてんのは確かだろう。
「いーち、にーい、さーん、しーい」
「何してんの兄さん…」
「ホクロ数えてる」
「は?」
ホクロってやつは数えると増えるらしいから、せめてもの嫌がらせに一つ一つ見逃さないように数え上げていく。ホクロまみれになって女子に引かれれば良いんだこのメガネは。
顔から始めて首に下って行き、指でなぞるとくすぐったそうに身をよじった。
「やめてよ」
「いーやーだ」
「はあ…」
ため息つきやがって。
肩甲骨のところにもホクロがある。案外あるもんだなあ、ぼんやり思う。
何となくその骨に噛み付いてみると少しだけ身体が震えた。
「………何、兄さん。誘ってるの」
「は?」
「ああそうですか…」
何かブツブツ言ってるソイツは無視して、またなぞっていく。
「北斗七星」
ちょっと無理がある風になぞって言うと馬鹿にしたようにため息をつかれて、なおかつ「馬鹿なの?」と口にもされた。
「馬鹿じゃねーよ!」
「いいや、絶対馬鹿だ」
「このメガネが」
「今は眼鏡してないでしょ。さっき兄さんが壊したんだから」
「……るせー」
視界端には確かにさっき俺が弾き飛ばしたメガネが転がっている。指に引っ掛かったのだから不可抗力のはずだ。
何となくむくれたふりをしてみると「まあ、別に良いけど」なんて言ってくるコイツは何だかんだで甘いと思う。
真っ白に飛んでるときみたいに、たまに酷く甘やかされているような気分になるのがいらつく。コイツは弟で俺は兄のはずなのにどうしてこんなにも余裕ぶっこいてんのか。
また骨に噛み付くいてやると存外良い音がして驚いた。
「痛っ」
「あ、わりぃ」
少し血が滲んでいる。申し訳なさが先立ってそれを嘗めとると「…自分でやったくせに」なんて言われた。やっぱりいらついて舌で少し抉ってやった。
「痛いんだけど」
は、ざまあみやがれ。