兄さんは覚えてる?昔よく修道院の物が壊れてたよね。実はあれ僕がやってたんだ。いつも兄さんがやったんだと思われて怒られてたっけ。後のほうになると弁解するのも嫌気がさしたのか怒られてるときもじっと俯いて拗ねた顔してたね。可愛かった。僕は兄さんに罪をなすりつけたかった訳じゃないけど、その顔が見たくて毎回黙ってたよ。今でもどきどきする、兄さんが怒られてるのをこっそり覗いてたときの気持ちを思い出すとね。最初は何でもかんでも壊してたけど特に兄さんの物を壊すのが楽しかった。だから兄さんがいないときにたくさん色々な物を壊したよ。兄さんが大切にしてた物ほどじっくり壊した。粉々にしちゃうと直せないから、ちゃんと丁寧に壊したよ。それで直してからもう一回壊すんだ、何回も繰り返すと結局ばらばらになっちゃうんだけどね。それっぽい何かが床とか壁にぶち当たって転がってぱらぱら音をたてて崩れるのがすごく面白くて何をするよりも楽しかったから何回も何回も壊したよ。覚えてないくらい。兄さんは怒られた後でも笑って僕に話しかけてきたよね。知らなかったんだから当たり前だろうけど僕はそれが嬉しかった。兄さんの物を壊して大切な物を壊して壊して色々壊して兄さんは壊されて怒ってたはずなのに僕に普通の顔で話しかけてくるんだからそれが嬉しくて嬉しくて仕方なかった。本当はそんな兄さんを一番壊したかった。僕が一番好きで大切なのは兄さんだったから兄さんをばらばらにして何回も何回も繰り返し壊したかったよ。でももうちょっと我慢しても良いかなあなんて思って今の今まで何にもしてこなかったんだけれど、ここ最近よくわからなくなって。兄さんが一番大切にしてる物ってなんだろう。思い出?学校?塾?友達?兄さんの大切なものって案外多いよね。あんなにひとりきりだったのに。だから聞いたよね。兄さんの一番大切なものは何って。そうしたら兄さんは今は雪男が一番大事だって言ってくれた。まさか兄さんの一番が僕だなんて思わなくてちょっとびっくりした。僕の一番も兄さんだったから。一番大切な物を壊すのが楽しいんだ。だから初めは兄さんを壊すつもりだったんだけど、兄さんの大切な物ほど壊すのが楽しかったことをこの前急に思い出して。だからこういう風になりました。僕一人でやるのは限界があってなかなか思い通りにはいかなかったよ。まだいくらかきれいに残ってるだろうから後は兄さんにあげる。好きに壊してください。ついでにこの手紙も気が向いたらばらばらにして楽しんでね。きっと面白いと思います。ではまた。




「意味わかんねえ。もうだいぶぐちゃぐちゃじゃん。どうやったらこうなんだよ。直せない。あははお前馬鹿だったのか。兄ちゃん今まで気づかなかった。昔っからとか年季入ってんのな。ていうかあれお前のせいかよ。俺結構辛かったんだからな怒られんの。たまに夕飯抜きとかにされたし。慣れたけどさ。ていうか大切とかわかんねえよ。もっと真面目に答えりゃ良かったのかよ。でも真面目に考えたところで答えは同じだったかもしんねぇってことが一番腹立つ。腹立つ腹立つほんと意味わかんねえよお前ふざけんなよふざけんなふざけんなふざけんな畜生!」

ぐちゃぐちゃだったけれど頭はきれいに残っていた。そりゃそうだ、頭を壊したらあっという間に終わっちまうんだもんな。一番長く楽しめるやり方でやったんだろ?ぐちゃぐちゃだ。ちくしょう。楽しそうな顔しやがって、ちくしょう。





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