「あ、あししびれた…」

ほんのり上辺に苦悶の表情を浮かべているのを見て不思議に思って聞いてみたらそんな答えが返ってきた。必死に足を動かさないようにしている奥村くんはやけに面白い。悪戯とばかりにつついてやると「やめろ馬鹿!」なんて怒鳴られてしまったのだけど、彼が自分相手にここまで必死に怒鳴ることなんてほとんどない。正直少し嬉しくなって、またつんつんと軽くつつき始める。

「志摩!やめろって…言ってんだろ!!」
「えー。だって奥村君おもろいんやもん」

大袈裟に反応する彼が面白くてついついからかうのを止めるのがもったいなくなってしまう。

「もんじゃない!や…やめっ…やめっ」
「てやっ」


「ひあっ!」


小さく身体を揺らして、艶めいた声を上げたのに酷く驚いた。
え、ええ、何が起こったん。
頬を真っ赤にしている彼は少し俯きがちにこちらを見た。それに心臓が握りしめられているようで、どきどきする。

「だから…やめろって言ったじゃん」

そんなに可愛く呟かれて何も思わない男がいるはずない。

「奥村くん!」
「へ?あ…志摩?」

彼の肩を勢いよく掴み、ばたんと音を立てて押し倒す。当の本人が何をされたのかさっぱりわかっていないような顔をしているのに少し興奮した。

「あっ、まだ足しびれてっからあんま動かすなよ!」
「なあ奥村くん、君これから何されるのかわかっとるん?」
「は?」
「……まあ、わかってへんならそれでもええんけど」

ちょん、と足つついてみるとまた先程のような声が上がった。

「だっ、だからやめろって馬鹿!」
「ええやん別に、これからもっとすごいことするんやから」

俺が乾いた唇を舌で舐めて濡らすのを見て、舌なめずりにでも見えたのか奥村くんは息を呑んだ。

「し、志摩?」

この状況の危うさに気づいたらしく今更慌てはじめたのだけれどもう遅い。
少々乱暴に口づける。下からくぐもった声が聞こえてくるのは無視して、無理矢理唇をこじ開けた。最後にひゅ、と小さく息を吸う音を聞いたっきり抵抗の声はなくなる。
口内を掻き回して歯列をなぞり、奥に逃げていた彼の舌を引きずり出して自分のと絡めた。隙をみて何度も逃げだそうとするそれをしつこく搦め捕る。少し吸うと彼の身体がはねた。ゆっくり唇を離すと細い銀糸が間を伝って、彼が顔を酸欠以外のもので赤くするのがわかる。それが愛おしくてどろどろにとけた顔にいくつかキスを降らした。

「奥村くん……」
「し、しま…!だめだ…ストップっ」
「今更止まれへんわ」
「ち、違っ…うし、後ろっ」

ん、後ろ?
言われてから気づいた。自分の背後から禍々しい気配が漂ってきているのに。

「…………………志摩くん」

あ、ヤベこれ死ぬ。
振り返るのが怖くて顔が引き攣った。ただ返事をしないのも怖いもんだから痙攣した笑顔でゆっくり振り返る。

「あ、あは…奥村先生ぇ…」
「こんにちは。ところで志摩くん、突然ですが質問です」
「な、なんですの…」
「銃殺と毒殺どちらが好きですか?」

どっちをとっても死にますねはい。
奥村くんは俺の下で「雪男かっこいい…」とか言うてるしなんや自分弟にメロメロやんけ!なんて思ったけれどとりあえず言いたいことは言っておく。

「や、優しくしてくださ…」
「問答無用」

ですよねー。





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