頭が痛い。
両手に持った銃でひとつひとつ撃ち抜いていく。それに不満を覚えることはなくなったけれど作業になるようになってしまってから僕は感情の揺れ動きというか、まあそういうものもだんだん無くしていってるんじゃないかなんて思うようになった。死にたいとか死にたくないとか、生物としての本能で死にたくないと思えるのならば理性でそれを捩じ伏せてしまっても本当に構わないのだろうか、僕は何か人間的なものを自ら捨てていってやしないか。僕はどんどん人間から遠ざかるのに兄はどうも人間に留まろうとしているようだ。人間でいたいのならばと普通の兄弟みたいに同じ屋根の下で暮らして普通の兄弟みたいに同じものを食べて普通の兄弟みたいに口喧嘩をして普通の兄弟みたいに僕は理性で人間を装っている。兄は結局悪魔でしかないけれど、限りなく人間に近いものになる努力を惜しまないのだから僕はそれを傍目に嘲笑っていて、そして憧憬を抱いている。
兄さん、貴方は人間だよ。少なくとも僕よりかはずっとね。
口元が自然に歪んでいくがわかった。さあ最後の一体を撃ち抜いて。慣れきった硝煙のにおい。手に馴染んだ拳銃。飛び散る空薬莢。弾けるそれら。歪む口元。重い弾丸。鳴り響く発砲音。ひそひそと聞こえる幻聴。
うるさいなあ聞こえないじゃない。
撃ち抜いた。気づけよ、何にも知らないお馬鹿さんたち。
細く息をすうと小さな音がなった。からから転がる僕の本能の残骸は笑えるくらいにしょうもない。笑えよ。おかしいだろう。足元まで転がってきたそれを踏み潰して、僕は表情を意図的に消した。
さ、帰ろうか。今日の夕飯はなんだろう。
普通の人間みたいに考えて、僕は少なくとも肉体は人間だけれど精神なんてそんなものだよなあとくだらないことをすり抜けた。
僕の本能は日々擦り減っています。さあ理性と本能悪いのはどちらですか。僕にとって兄にとって彼らにとってその他にとって大切なのはどっちですか。あはは、どっちが残ってもくだらないけどね。醜く縋っていくだけさ。あとお忘れないように、僕はちょっとばかり人間に近いものです。元は人間でしたけれど今は本能と理性どちらに傾いているのかすらわからない生き物で、そういう有様ですので。兄とは少しばかり意味合いが違いますけれど、気にしていると生きるのが面倒ですよ、君。はい、理解したのなら宜しい、お帰りなさい。せいぜい君が素敵な生をおくれるように願っておいてあげましょう。


(悪魔じゃないけど)





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