ぶちっという音と共に差し出されたのは、四つ葉のクローバーだった。

「あげるよ」

いつも通りの笑顔に訝しむと当然のように彼の眉が下がる。

「四つ葉のクローバーって、幸運をもたらすって言うよね」
「……」
「ボクは日向クンにも幸運になってもらいたいな」
「それは、」

言葉の続きは出なかったが、何が言いたいのかはわかったらしい。狛枝の言う幸運は、一体どういう意味なのか。
狛枝の幸運は、一体何だろう。
目を細めたままの瞳は様子が伺いにくい。重さを含んでいるようにも見える。軽い意味合いにも取れる。この選択が俺に何をもたらすのか。

「ねえ、ボクの才能は『幸運』なわけだけど、それって誰かに分けるのは当たり前に出来ないことでしょう?」
「だって才能だもの」
「誰にも渡せない」
「もちろんキミに押し付けることも出来ない」
「ボクの才能はボクのものだ」
「他の誰のものでもない」
「誰かを幸運にできるわけじゃない」
「ボクだけのものだ」
「だから安心して良いよ」

安心して受け取ってよ。
笑うな。笑うと真意が読めない。一番明朗に主張する、ヤツのぐるぐるとぐろを巻いた瞳が細まって、見えない。
ねえ。
じっとり背中に張り付いたような気がした。血の付いた手が窓ガラスを汚すように跡を残して。指の隙間から見つめられている吐き気。嗚咽。
反射のようにその草を掠め取った。脂汗が気持ち悪く流れた。べとべとしている。

「あは、ありがとう」


開いた目はぐちゃぐちゃ糸を引くくらい淀んでいた。





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テーマ「人外ファンタジー」
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