「ルキちゃん目、腫れてるね」
「……クレアさんデリカシーないよね」
「マジかよ…」

女の子って難しいな。ルキちゃんは昨日アルバくんのところに行っていたらしい。感情豊かな彼がシーたんの葬式では心が抜け落ちたみたいに立ち尽くしていたから、オレも心配していた。話に聞くと一時期はほとんど飲まず食わずで過ごしていたらしい。このところはそれが嘘だったみたいに元気になってきて、ルキちゃんはその理由を聞きに行ったようだ。で、この状態。

「アルバさんに泣かされた」
「マジかーアルバくんひでーな」
「冗談だよ」
「わかってるよ、付き合い長くないけど、アルバくん良いやつだもんな」
「……そうだよ」

ふっくり腫れた目を伏せると、重そうなまぶたが重量につられてそのまま落ちてしまいそうだった。しばらくの沈黙。
シーたんが死んでオレも悲しかった。そりゃあそうだ、だって親友なんだから。けど、一回バカみたいにわんわん泣いたら心の置きどころが見つかったような気がして、少しはマシになった。今だってまだ一人になると悲しみに押されて泣く。それでも飯も食べられないってほどじゃない。他人の心配くらいはできる。ルキちゃんは賢くて強い子だから普段はこんなに泣いたりしない。お父さんやお母さんがいなくなったときにも一人ぼっちで頑張っていたと聞いた。そんな彼女がここまで泣くのだから、きっと何かあるのだろう。

「…アルバさん、ロスさんの幽霊がいるんだって言ってたの」
「シーたんの幽霊?」
「そう。ロスさんが姿は見えないけど前みたいにいたずらしてくるんだって」
「えっ、シーたん死んでからもアルバくんにちょっかい出してんの?!」

スゲーな!これが執念ってやつだな!そう言って笑うと彼女はまた目を伏せた。
ああ、これは。

「違うよ……アルバさん、魔法を使ってポルターガイスト起こしてるの」
「え?」
「アルバさんは無意識に魔法を使って、ロスさんがしそうないたずらをしてるだけなの」

ルキちゃんの伏せたまぶたから近頃見慣れてしまった水滴がこぼれた。「ああ、もう泣きたくないのに…!」ごしごし擦るから腫れるのだろう。けれどそれを止める気にはなれなかった。

「わたし、自分が情けなくって、アルバさんの力になってあげられない、おとなしく話も聞いてあげられない」

助けてあげられないんだ!わあっ、と涙がたくさんこぼれた。ルキちゃんの涙はとってもきれいだけれど、それに価値の上下なんてない。泣いたって泣かなくたって悲しいものは悲しいし、つらいものはつらい。大切な人の力になれないのはキツいよな。見てるだけは、しんどい。ハンカチなんて持っていないのでゆるく抱きしめる。シャツがびしょびしょになるだろうな。年頃の女の子になにしてんだって怒られるかもしれない。それでもつらいのを、しんどいのを分かち合いたくて、何が言いたいのかって、オレだって泣きそうだったのだ。






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