「兵助、お前マジで豆腐食い過ぎ。豆乳に豆腐丸ごとってどんな弁当だよ」

向かいに座った三郎が口元をひきつらせながら俺の昼飯を示した。なんで?美味しいじゃん、豆腐。

「兵助はそういうとこ、ホント変わんないね」

「ね、好きになったら一直線っていうか。佐々木といい豆腐といい」

「兵助、ヒョロい男は佐々木に嫌われるぞ、なぁ佐々木!!」

はっちゃんが離れた席のリョウに向かって声を掛ける。友人と談笑していた彼女がパックジュースを手にしながら「はぁ?」と振り返った。リョウはパックジュースが好きだ。いつも飲んでる。

「見ろよ兵助の昼飯!」

「勘ちゃん、俺の昼飯そんな変?」

「いや、変っていうか…」



「…………っく」



小さい押し殺した笑い声みたいなものが聞こえ、みんな一様にきょとんとする。俺らの誰も笑ってない。ということは。


呼吸が止まりそうになる。


「あっははは!な…なんでお弁当が豆腐…しかもパックで豆乳付き!久々知、あんたどんだけ豆腐好きなわけ!初めて見たよこんな豆腐のフルコース!」

可笑しそうに腹を抱えながら、リョウが笑う。笑っている。俺に向かって。



笑顔を、向けられる。



「ええええ!?ちょ、兵助!?」

「ちょっ…ごっごめんって!私笑いすぎ!?笑いすぎたの鉢屋!?」

「知らねーし、おら兵助泣くなって」

三郎に言われて初めて、自分が泣いていることに気付かされた。滲む景色の向こうで、リョウがおろおろと慌てている。ああその顔も好きなんだけど、お願いだもう一度笑ってみせて。

「ごめんって久々知…弁当なんか自分が好きなもん食べればいいよ、笑ってごめんね」

「僕らも悪かったよ、悪ノリしてごめん兵助」

「ダメ」

「え?」

俺の目にハンカチを当てていたリョウの手をそのまま握り、引き寄せる。簡単に倒れ込んできたリョウの体をぎゅうっと抱き締めた。リョウの匂いがする。髪に頬を寄せる。暖かい。柔らかい。好きだ、好きだ、大好きだ。だからお願い。



「もう一回笑ってくれたら、許す」



ダイヤモンドダスト




「〜〜〜っ!許すも何も…あんた笑われたことに怒ってんじゃないの!?っていうか離せバカ!」

「豆腐弁当は美味い」

「関係ないだろうがこの豆腐バカ!なにガッチリホールドしてんの!大体何で泣いたわけ!?」

「……そうだよね、兵助が豆腐弁当笑われたくらいで泣くわけないよね」

「完璧に俺らまで勘違いしたな」

「なぁ…あれ放っといていいのか?」

「いいのいいの、見てよ兵助のあの幸せそうな顔。そんなに佐々木笑ってくれたのが嬉しかったんだねぇ」

「笑うどころか今般若だけどな」

勘ちゃん達4人が、俺とリョウを見ながら懐かしそうに瞳を細めていたのを、俺は知らない。

「ほら、誰か佐々木に教えてあげなよ、兵助のあれは嬉し涙だって」





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