カーテンから漏れる爽やかな朝の陽光。軽やかな鳥の囀り。そしてわたしを包む温かな人肌。……ん?人肌?ひ…

「人肌ぁああ?!」
「んん…うるせーよ絢音…」
「まだ早ェだろ、もうちっと寝かせろよ…」
がばりと起き上がったわたしを両側から掴む腕。無理矢理伏せさせられてベッドに逆戻り。いや、そうでなく!どうにか首だけを起こして周りを確認すると、どうやらわたしの両側にいるのは銀時と晋助で、足元には小太郎が丸まっている。さらに首を伸ばすと、眠っている途中で落ちたんだろう、辰馬がベッドの下で爆睡していた。朝っぱらから絵面が衝撃的すぎて、わたしは両側から押さえこまれている腕も何のその、もう一度がばりと起き上がり現状把握を試みる。そのはずみに足元にいた小太郎を蹴ってしまったようで、小太郎はころころとベッドの下に落ちた。うげえ、と二人分の悲鳴が聞こえたから、きっと辰馬の上にでも落ちたんだろう。ざまあみろと思ったところで、何故か辰馬の嬉しそうな声が聞こえた。
「おお、ヅラの髪は寝起きでもサラサラじゃあー」
「む、坂本やめろ何をする…あだだだだ!」
「おお!気持ちえいのーまっことおなごのような髪じゃきー」
「や、やめろ……く、くすぐった、」
「朝からいちゃいちゃすんなァア!」
ああもう、と頭を押さえたところで小さなくしゃみが出た。そういえばなんか寒い。なんでだ、布団は被ってるしご丁寧にタオルケットにも包まってるし、パジャマもちゃんと着て
「………」
いやいやいや。
さすがにこれはないよないない、そこはさあなんだかんだ絶対越えちゃいけない一線じゃないか。
わたしはごそごそと肩まで布団に潜り込んだ。手探りでパジャマを探すけれど、結局見つかったのは同じく何も着ていない銀時と晋助だけ。これはアレか。大人がよく言う、酔った勢いで的なアレか。いやいや、つーか昨日何したんだっけ、何でこいつらが家にいんの。ああ、だめだ思い出せない頭痛いついでに体も痛い。
「そりゃあんだけしたら腰も痛いわな」
「う、わ!あんだけって何、したって何を!ていうか人の思考読まないでよ」
「思考駄々漏れだっつーの。つーかアレだよな、絢音の口は上も下も駄々漏「ぎゃああすいませんわたしが悪かったですう!」
もういい知らない、わたしは過去は振り返らない主義なのだ。そんなものを振り返っている暇があったらすれ違ったイケメンでも振り返っておいた方が目の肥やしになるというものだ。
手早くタオルケットを巻き付けて起き上がる。踏み出した一歩でなんか柔らかいものを踏んだ気がしたけど気にしない。晋助がお腹を押さえて悶絶してる気がするけど気にしない。
「気にしない、じゃねえ!テメ何ひとの腹踏ん付けといてシカトしてんだよつーかどこ行くんだ」
「うるさい触んないであんたらに近付いたら妊娠する」
「するか」
「む、なんだ絢音そのはしたない格好は。きちんと服を着ろ」
「それはこっちの台詞だ、全員服を着ろ!」
タオルケットを巻き付けただけの情けない格好のわたしはそのままクローゼットまでずるずると徘徊する。あーもう!とりあえずパンツ!パン……ツ、
「あれ、はいてる」
ぐるりと四人を見渡せば、全員服こそ身につけていないにしろ、トランクスだけはどうにかはいていたようだった。銀時が呆れたようにわざとらしい溜息をついて銀色の髪を掻き交ぜる。何だろう、激しく腹立たしい。

「たりめーだろ、俺らが無理矢理そんなことする最低な野郎に見えるか?」
「うん、見える。特に銀時と晋助」
「……」
「アッハッハおまんらは仕方ないき、金時と高杉の半径三メートル以内におったら妊娠するぜよ」
「だからしねェっつってんだろうが」
「ていうか素っ裸で寝てたんだから全員同罪!」
「素っ裸ではないぞ。ちゃんと下は穿いていただろう」
「トランクスの危険度なめんじゃないよ」
「うっそポロっちゃってた?視聴者サービス的なのしちゃった?」
「自惚れんな、あんたのポロリなんかただの放送事故だ」
いやでもまあしかし、何もなくて良かった。これでわたしはこれからも安心して純情乙女としての立ち位置をキープできる。男4人とうっかりおやすみしてしまうことくらい世の純情乙女にもあるはずだ。乙女という種族は類に漏れずうっかり者だからな。
「それをうっかりで済ませる奴はもはや乙女じゃねえよ」
半眼でぽりぽりお腹を掻いているおっさん丸出しの銀時を無視して学校に行く支度を始める。大体、こいつらは何だって何でもない平日にうちに泊ってるんだか、寝坊でもしたらどうす
「あ!」
「なに、今度は何」
「何じゃない!学校!時間!」
テーブルの上にあった携帯の時計はすでに11時過ぎ。遅刻と言えるレベルじゃない遅刻だ。最速で制服に着替えて、のんびりと髪を乾かしている小太郎の長髪を引っつかみ、ぐずぐずと制服を纏っている晋助と銀時のネクタイを引きずり、呑気に笑っている辰馬のもじゃもじゃに手を突っ込んでようやく家を出た。まだ登校すらしてないのに鬼のような疲れがどっとわたしを襲う。


結局わたしたちが学校についたのは、昼休み前最後の授業が殆ど終わる頃だった。遠慮も何もなく晋助がガラガラと乱暴にドアを開けるものだから、みんなの視線が一遍にこちらを向く。わたしはそろりと辰馬の後ろに隠れた。
「おまえら後で職員室なー」
ちょうど授業だった担任の全ちゃんに腑抜けた声で呼び出しを言い渡される。相変わらず両目は前髪に隠れていたけど、その奥がきらりと光ったのをわたしは確かに見た。
 
#03.about good morning with scream

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