文章修業家さんに40の短文描写お題
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- 0313 09.大人(月島蛍)
 
21.神秘
 

22.噂(半田先生)
島を出るのか と先生は半紙に目を落として聞いた。ただの噂よ。此方を向いている先生の頭の天辺に言うと鴉色のそれが そうかと返事をする。ごめんね先生この島に噂は無い。

23.彼と彼女(石川透)
目の前に座っているのに透は遠い。彼女を見てため息ついたりむくれたり。わたしだったらいつでも透を笑顔にさせたげるのに・むかつくなあ。「あ、俺のジュース!」「…ばか」

24.悲しみ
 

25.生(宜野座伸元)
宜野座が失ったものの大きさは彼を圧し殺してしまうと思った。生きていてほしかった。それが例えわたしの手の届かない場所でも。その手はまだ温かさを失くしてはいない。

26.死
 

27.芝居
 

28.体
 

29.感謝
 

30.イベント(塚原要)
すっかりお化け屋敷に様変わりした教室の隅で窓枠に伏した長い髪が夕陽を浴びている。そのひと束を指で掬うと校内の喧騒がやにわに遠退いて俺は静かに目を瞑った。

31.やわらかさ
 

32.痛み(菅原孝支)
唇を噛み締めていた菅原が叫ぶ。悔しさも痛さもその全部を喉の奥で声援に変えて叫ぶ。血を吐くような彼の声はいま、飛べない烏に翼を与えた。傷だらけの唇で菅原が笑う。

33.好き(森山由孝)
その口は実に軽々しくわたしを好きだと言った。それでも、こちらに伸ばされたその指先がちいさく震えているのを知ったから。わたしはこの男に愛されることを決めた。

34.今昔(仁王雅治)
それで仁王は何を手に入れたの。寝台に肘をついた銀髪が さあの と首を傾げる。全てかもしれんし、何も手に入れとらんのかもしれん。笑う彼は今も紛れもなく詐欺師だった。

35.渇き(浅羽悠太)
目の前にはこんなに水があるのになあと落ち葉が浮かぶ季節外れのプールサイドで、水分の飛んだ唇を舌でなぞってみる。からからの心で伸ばした手は、ちゃんと君に届いた。

36.浪漫
 

37.季節(荒北靖友)
鋭い目つきに、ぐるぐる巻きのマフラーが似合っていない。寒い寒いと丸めて歩く背中で、しなやかな背筋が浮いている。隣に自転車がないだけでこんなにも君はちぐはぐだ。

38.別れ(巻島裕介)
玉虫色の長髪が、ゲートの向こうへ消えていく。伸びたり切ったりを繰り返し、今はあの頃と同じくらい。次の約束はしなかった。いつもお互い、これが最後と思っている。

39.欲
 

40.贈り物(氷室辰也)
指輪はいらない と言うと辰也は困った風に眉を下げて そっか と笑った。薬指に未来を約束しても、その胸元で彼の過去が鈍く銀色に光る限りそれは一番にはなれないのだから。

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