むかつく。無性に苛々してしまった。些細な事の筈なのに、それに凄く嫌悪してしまって、傷付けた。
ディランが、可愛い女の子達と楽しそうに喋ってるのは珍しく無い事だ。斯く言う俺もそれなりに喋ったりする。
だけど何故か、今日に限ってそれが嫌で、そんなつまらない事に苛々した自分も嫌で、話し掛けて来たディランをつい殴ってしまった。
殴るつもりは無かったのに。殴ってしまったら、塞き止めていた言葉が洪水になって溢れて、ディランを襲った。
俺が我に帰って慌てて手を伸ばした時には、もうディランは遥か向こうに流されていて、俺は息を飲んだのだった。

走って逃げて、グラウンドから飛び出した。
カズヤにもアスカにも、ディランにも見付からない場所で、頭を冷やしたかった。
何でこんなに苛々しているんだろう。それに苦しい。後者はきっと罪悪感だろうけど、前者は何だろうか。
もやもやした気持ちに包まれてしまって、隠れるのも忘れその場にしゃがみ込む。

ディラン、きっと怒ってるだろうな。当たり前か。
急に殴られた上に意味も分からず罵倒されたのだから。
謝りに行きたいけど、自分から会いに行く勇気も無い。
愛想、尽きられたらどうしよう。もう尽きた?
こんな面倒臭い奴は嫌だって、思われたかもしれない。
俺がディランなら、きっと、もう、
あ、泣きそ、う




「マーク」

「ッ!!!」




背後からの聞き慣れた声に恐る恐る振り返ると、俺が殴った左頬を真っ赤にしたディランが息を荒げて立っていた。
俺がやったのだが、真っ赤に腫れた頬が痛そうだなぁ、と他人事の様に思ってしまった。
ぼんやりとディランの顔を見たら、じわりと涙腺が弛んだので、慌てて膝頭に顔を埋める。
どうして追い掛けて来てくれたのだろうか。
震える唇を叱咤して、問い掛けてみる。




「…ど、して……」




ディランが近付いて来る気配がした。
そっと肩を触られて、情けないが身体がビクッと震えてしまった。




「マーク、顔上げて?」

「う…」

「…ソーリー、マーク…
仲直りしよう?」




仲直りだって?
その言葉に反応して顔を上げてしまった。
目の前に居るディランの顔は、アイガード越しでも分かる程困っている表情を作っていた。少し悲しそうな、顔。
違うだろう。俺が悪いのだ。ディランは何一つ悪くない。
反論しようとしたら、ディランに抱き着かれた。
ぎゅうぎゅうと締め付けられて、変な声が上がった。ぐぇ、だなんて情けない。




「……痛かっただろ」

「ううん、アグレッシブなマークもイイなぁと思ったよ!」

「…ごめん、ディラン」

「ノープロブレム!」




微かに目に浮かんでいた涙を、ディランはキスで拭う。
そのキスが優しくて俺は堪らずディランの背に腕を回した。
するとディランは顔中にキスの雨を降らせて来る。
擽ったいと身体を捩らせて、お返しにとディランの額にキスをした。
本当は頬にしたかったのだが、俺が殴った所が痛んではまずいので額にした。
きっと明日には痣になってるんだろう。
氷嚢とか、湿布とか、帰ったら俺がやるんだ。
アスカじゃなくて、俺がやる。
ちゅ、と唇にも軽くキスすると、ディランも軽くキスしてくれた。
啄む様なキスを繰り返した後、恐る恐る聞いてみた。
Oh,my god――どうかまだ、




「ディラン、俺の事、好き?」

「勿論さ!!」

「…ん、」




良かった。










(チョットやりすぎた…)
(……マークに嫌われたら、ど、しよ……!)







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ゆのさん、リクエストありがとうございました!
マークは言葉より先に手が出そうだなぁと思ったらこうなりました…すみません。全く喧嘩と形容し難いですね…
同じ事を考えてオロオロしてるユニコンビ可愛いと思います^^

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