我らがキャプテン(代理)は、案外適当な性格をしている。
と言うより、サッカーの事以外に興味がまるでない様な人間だ。
だから放っておくと飯も食わなくなるし、眠る事も無くなる。
身体が動かなくなったその時に、やっと飯や睡眠に徹するのかと思えば、そんな事は無く、身体が動かないのは自分が弱いからだと直ぐに自分を追い詰める。
自分で自分の首を絞めている奴で、放ってはおけない。放っておいてはいけない。
マルコにパスタを、オットリーノにピッツァを作って貰い、食わせると、フィディオは嬉しそうに笑う。
確かに美味いが、そんなに幸せそうに食うのは、お前が日頃物を食べていないからだと言いたくなるが、中々言えない。
俺がその言葉を言った時のフィディオの顔を、見たくない。
睡眠は、夜に練習を禁止する事でやっと眠る。
誰かと同室の時は必ず見ててもらう事を皆に任せてある。部屋を抜け出すのを止める為に。

てじゃなく、自分の目で。




「なぁフィディオ、そろそろお前、」

「もう少し」

「…」

「もうすぐで、何か掴める気がするんだ」




今まで以上に真剣な目をして、サッカーボールと向き合っていたが、それは違う気がした。
もうサッカーは十分だろう?早く気付いてくれ。
食事もしない、睡眠も取らない。
気付けば気絶をした様に眠っていたり、水やスポーツドリンクだけで済ませていたり。
サッカーの事を知る前に、身体が壊れそうだ。
きっとそれはフィディオも分かっている。
上手くいかない自分をどうしたらいいのか、分からないだけだ。

もうすこし、と呟くフィディオを抱き締めた。
随分痩せてしまったと実感しながら頭を撫でる。
甘え方を知らないんだ、お前は。小休止と言う意味を知らないんだ、お前は。
そんな思いを込めて、力も込めた。
息も乱さず微動だにしないフィディオだったが、少ししてから小さく呟いた。




「…もう、いいかなぁ」

「もういい」

「……うん」




ゆるゆると申し訳程度に掴まれた自分のユニホームを見て、少しだけ寂しくなった。
まだ、まだ、駄目なのだろうか。まだ俺じゃあ頼り無いのだろうか。
フィディオはまだ気付いてくれない。
掴めない何かは、サッカーには無いんだと言う事を。
俺は一度目を閉じてから、再び開けた。
気付かないなら、気付かせればいいのだ。




「なぁ、そろそろ、疲れただろ?」

















フィディオは目を大きく見開いてからゆっくりと瞳を閉じた。
ぼろり、涙が零れた事を、ジャンルカは気付かない。









×でも+でもいい
BGM:ろーーりんがーる


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