「……濡れた」
「……濡れたなぁ」


練習も休み。お互いに用事が無いとなれば、部屋でゴロゴロするのも良いけど二人で出掛けるのも悪くない。
そう思ってフィディオと二人で外へ飛び出した。
体をしっかり休めろよ、と言うジャンルカの言葉に素直に頷いて、サッカーボールは持たずに。

暫く話ながらのんびりと歩いていたら、急に雲行きが怪しくなって来て、ぽつり、ぽつり、雨粒。
空を見上げれば、一面真っ黒な雲に覆われていた。
どうして今まで気付かなかったのか、と言えば、そりゃあ俺はフィディオしか見てないし、フィディオは俺しか見てないからに決まってる。
自意識過剰じゃないよ!いつものことなんだから!
俄か雨でも、小雨でも、俺は兎も角、フィディオを濡らす訳にはいかないと、羽織っていたジャージをフィディオの頭に被せて、フィディオを抱え上げた。
屋根のある所へ向かう為、だ。
ぎゅう、と俺の首に腕を絡めて来たフィディオは凄く可愛かった。
ついキスしたくなったけど、今は移動が先だよな。

――と、冒頭に戻る。
俺の苦労も虚しく、フィディオは少しばかり濡れてしまっていた。
フィディオを下ろして、髪に弾かれている雨粒を払いのけると、擽ったそうに笑う。


「マルコの方が濡れてるじゃないか」
「俺は良いんだよ
寒くない?」
「……寒い」


フィディオが俺の頬に触れて、呟く。
慌てて雨で重くなった自分のジャージを絞ったが、フィディオの視線で途中で違うと気付いた。
あ、そっか。俺も寒いよ。

フィディオの手を握ると、フィディオは柔らかく微笑む。
本当は抱き締めたいけど、フィディオの体を冷やす訳にはいかない。


「寒くない?」
「…ハグは?」
「フィディオを濡らしたくないから駄目!」
「ええええー…!?」


つまんない、と形作った唇が尖った。
拗ねた所も好きだけど、やっぱり笑ってた方が良いなぁ。

ジャージが手から滑り落ちると同時に、フィディオの頬に両手を添えて、キスしてやった。
ちゅ、と軽く音が鳴る。


「キスだけで我慢してよ、ね?」
「…む…」
「ハグは帰ってからしよう?
……時間はたくさんあるから、」


それ以上の事も出来るよ?

そう言って、もう一度唇を重ねると、フィディオは真っ赤になっていた。
でも満面の笑みで頷いたのだった。
……もう帰ってからじゃなくても、いいんじゃない?
数分前に言った言葉をもう取り下げたくなったのは此処だけの話。











「あれ、お帰りジャンルカ
フィディオとマルコ迎えに行ったんじゃなかったの?」
「……胃が痛むから傘だけ置いて帰って来た…」




******
柚稀さん、リクエストありがとうございました!
げろ甘……になってるでしょうか…怪しいですが、楽しく書かせて頂きました。
マルコがフィディオにべた惚れ。片想いが多かったのでかなり新鮮です…!
こんな所でもマイナーさが出てしまうなんて……
何はともあれ、これからもよろしくお願いします^^

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