ふわり、とセンタリングされたボールをそのまま蹴った。アンジェロのパスは正確で柔らかい。
ボールは真っ直ぐに伸び、キーパーが居るのにも関わらず、すんなりとゴールへと吸い込まれる。
ばさっ、と言うネットの音と、ホイッスルの音。
一点入った。

さて、俺が一番に誰の所へ向かうか。
それはもう決まってる。


「マルコっ!」

「ナイスフィディオ!」


前線からDFラインまで結構距離があるけど気にしない。
だってマルコの所に行きたいんだ。一番にマルコにハグして欲しいんだ。褒めて欲しいんだ。
地面を蹴ってマルコの胸目掛けて飛べば、マルコは俺を受け止めてくれて、ぎゅうってハグしてくれる。
奥手なマルコが唯一積極的になる場所なんだよ、フィールドの上って。うん、俺って策士だよね!
ぎゅうってし終わって離れたら、皆が駆け寄って来て、声を掛けてくれたり、肩を叩いたり頭を撫でたりしてくれる。それが凄く嬉しい。
だってフィールド上でもこんなに一丸になって喜んでくれるチームなんて、滅多に無いと思うよ?


「フィディオ!もう一点頼むぞ!」

「あぁ!」


ポジションに戻ると、ブラージが後ろから声を掛けてくれる。
もう一点、頑張ろうか。トリプレッタ目指してる訳じゃないけど、我らがキーパーからの頼みだもんね。点差はあるに越した事はない。
隣に居たアンジェロが、こくんと頷いて笑った。
そしてちらりと後ろに居るマルコを見る。滅多にしてくれないけど、次入れたらキスしてくれないかなぁ、なんて。
流石に試合中は無理かな。普段だってそんなにしないもんなぁ。なんて当たり前な事を思い浮かべて、前を向いた。







ばさっ、とゴールにボールが入った。
わ、トリプレッタ…!
練習試合とは言え、嬉しい物は嬉しい。自陣に戻るため、踵を返して走る。
センターライン付近で、マルコが待っててくれた。
先程と同じ様に飛び付くと、ぎゅ、と強く抱き締めた後に、マルコは直ぐに離れた。
あれ、嬉しくなかっ、た…?
と、思ったら、ちゅ、と言うリップ音。俺の唇に。
数秒遅れて、俺は我に帰った。
ま、マルコが、俺に、キス、した!
予想外の展開に、ぼっと顔が熱くなるのを感じた。あ、いや、予想?希望はしてたけど!まさかそれが叶うなんて思いもしなかった。
いつもはこんな事何とも無いのに、顔があつい…!
マルコを見ると、こんな時に限って、余裕そうに笑うから。俺は全身から火を吹き出しそうになった。


「嬉しかった?」

「……凄く
だって俺、次はキスしてくれないかなって…!」

「うん、知ってる」

「え?
な、なんで……」

「キスして欲しそうな顔、してたから」


今度は額に唇が落ちてくる。
あ、あう、わ、今日のマルコは、何だか別人みたいだ。
それともフィールド上なら、こうなのかな。
嬉しくて、こそばゆくて、恥ずかしくて、俺はマルコの肩に顔を埋めた。そうしたらマルコはぎゅうって抱き締めてくれて。
……次の試合も、トリプレッタ決めよう。そう決意した日だった。










(嬉しくて、しんじゃい、そ)
(照れたフィディオ、かわいいなぁ)











→トリプレッタ=ハットトリック
ハットトリックはイタリア語でトリプレッタと言うらしいので。
練習試合中にいちゃこらしてんじゃないぞ、とツッコミたいけどイタリアだから許されるとも思う。

げろ甘なマルフィいいと思います。
マルフィ増えろー\(^O^)/





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