※ちょっとちゅうい!




ずいずいと詰め寄られて、壁に背中が当たった。
え、嘘、壁なんかあったっけ。そう思って後ろを確認している間に、顔の横に手を置かれて、身動きが取れなくなった。
しまった、油断してた。
目の前に近付いた整った顔。長い睫毛に白い肌。そのエメラルドグリーンに吸い込まれそうになるのは一度や二度では無い。癖っ毛が近付いて来たので、反射的に俯き、近くにあった胸板を押し返した。
しかし、俺の小さな抵抗は、彼には何とも無いことらしい。長く細い指で俺の顎を掬い、上を向かせられる。
だめだ、と思った時には本当に駄目だった。
唇を重ねられ、何度も角度を変えられて、舌を絡め取られる。俺が逃げ腰になっていても、舌を逃がそうと躍起になっていても、最後には必ず、俺は力尽きるのだ。



「っふ、は、ぁ…っ、は」

「フィディオってばまた腰砕けたの?」

「う、るさっ…いぃ」

「そんなによかった?」



にっこりと楽しそうに笑った、マルコ。
悔しいけど、マルコは凄く上手い。それはもう、格段に。
腰が砕けて座り込んだ俺の頭をポンポンと撫でて、ニコニコしている姿はむかつくけど。
そんなマルコから何とか逃げ出そうと足掻くけれど、俺の呼吸が整うのを見計らって、マルコは再びキスをして来る。
二度目のキスは、最悪にして最高である。
一度目が優しく思えるほど、二度目は激しい。腰が砕けると言うレベルじゃない。身体の芯から揺さぶられる様な、そんな感覚。気を抜いてたら、イかされそうになる。
息をする暇さえ与えて貰えず、酸素を求めて口を開ければ開けるほど、舌は絡み付いて来て離そうとしない。いたちごっこにも程があるだろう。
次第に苦しくなって、生理的な涙が目に溜まり始める。泣く訳には行かない。恥ずかしすぎる。
しかし無意識の内にマルコの腕に触れていたらしく、マルコが唇を離す頃には、マルコの胸へ倒れ込んでいると言う訳である。



「……ど、して……」



チームメートである俺にこんな事をするのだろうか。
マルコは女の子達に普通にモテるのだから、キスをするなら女の子達にすればいいじゃないか。それとも、俺はその練習台と言う訳なのだろうか。
憎らしいまでに輝くエメラルドグリーンに見つめられたくなくて、俺はひたすら地面を見つめた。
息が苦しい。胸がバクバクいって、息が上手く出来ない。練習中にもこんなになった事は無い。それ程マルコのキスは激しいと言う事なんだろうけど。
俺の心中を察したのか、マルコはくすりと笑った。
その笑い声に釣られて顔を上げると、少しだけ、ほんの少しだけ悲しそうな笑顔が俺を迎えた。



「君が好きだからだよ」




















→病んで…る……?


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