夏のグラウンドは地獄である。
太陽がジリジリと地面を燃やして、そのまま俺達まで燃やそうと躍起になっているのが更に鬱陶しい。
エアコンでもあれば涼しいのだろうが、残念ながら屋外にエアコンが付く日は遠そうだ。それよりも地球温暖化を食い止める方法を考えるべきだな。
ばさばさとユニホームの裾を持って扇いでいたら、後ろから誰かに飛び付かれてバランスを崩す。
前のめりに倒れそうになったが、何とか踏ん張って後ろを見た。
こんな事をするのは、カズヤか――
「…ディラン」
「Oh,マーク!汗だくじゃないか!」
「こんなに暑いんだ…
ディランは暑くないのか?」
「暑いけど、午後からもっと暑くなるってアスカが言ってたよ!
大丈夫?」
「……自信無い」
アスカの言う事はほぼ当たる。まだ太陽は真上にすら昇っていないのだ。そう考えると、恐ろしい。
俺もまだまだ練習不足という事だろうか。スタミナ面が心配で仕方無い。
ディランがくっついている背中がじわりと暑くなっていくのを感じる。…あつい。あつい。
その代わりになるのかは分からないが、ばさばさと腹の方へ空気を送る。…気休め程度に風が来る。
「………」
「ディラン?」
「んー…」
「…ディランも暑いのか?」
うーん、だとか、あー、だとか呟き続けるディラン。
何が言いたいのかわからずに、首を傾げる。
どうしたんだと口を開いた瞬間、ディランは俺の首に唇を当てた。
そしてそのまま強く吸った。
「あ、ッ!!?
ディラン、何を…!」
慌ててディランを引き剥がせば、ディランは俺を逃がすまいと俺の腕をがっちり掴んでいた。
鬱血した部分が浮き上がっているだろう首筋を空いた手で押さえながらディランを睨んだ。
こんな人目があるグラウンドで何するんだ…!
「マーク、えっちぃ」
「……what?」
「あーッ!
もうミー我慢したくない!
汗ばむ肌とか、赤い頬っぺたとか、張り付く髪とか、チラチラ見えるキュートなお腹とか!誘ってるよねマーク!ミーを誘ってるんだよね!!?
キスマーク付けたら、情事後みたいでますます……」
「……」
「……顔、真っ赤だよ、マーク」
「!!!
そ、そんな事っ、」
無い。無い筈なのに。
そんな事言われたら、何も出来ないじゃないか。
汗を止めるなんて不可能だ。こんなに暑いんだから。
全て不可抗力なのに、何でこんなに恥ずかしくなるのだろうか。
普段ならさらりと流せる筈の会話なのに、暑さのせいか、頭の回転が上手く利いていない様だ。
ニヤニヤと口元を上げながら迫って来るディランを見てしまえば、更に思考が追い付かなくなってしまう。
顔があつい。身体全体から、火が出そうだ。あつい。あつ、い…!
あ、う、もう、どうしたらいいのか…わからない!
「ディランのバカァァァ!!!」
「エエッ!!?
どこ行くのマーク!」
赤面が隠せなくて何故か泣きそうになってたまらなくなって走って逃げ出したら、追い掛けてきた
(そりゃあもう、狩猟犬の如く)(めっちゃこわかった!)
「ストップ、マァァァク!そんなに急に走ったら…!」
「っ!」
「倒れるってアスカが言ってたー!!」
「ノォォォ!マーク!」
「うぅ……」
→土門はオカンだよって、言う…
title by 揺らぎ