あれ、おかしいな。と思ったのが数日前。
そして、おかしい。と確信したのが今日だった。
胸の辺りがキリキリと痛むのだ。あと凄くモヤモヤした気持ちになったり、走ってもいないのに苦しくなったりする。
まさか病気にでもかかったのかと思えど、食欲はあるし、運動も出来るし、熱も無い。一体何だ?
――これはもしや、恋の病では無かろうか。
そんな事をぼんやりと思ったけど、最近は練習漬けで女の子とデートなんかに行ってる暇なんて無かった。
……まぁ、誰かさんは行ってたみたいだけど。フラれて帰って来てたけど。ざまぁジャンルカ。
兎も角、女の子と接する時間が無かったのだ。
恋なんか出来る筈もない。よって除外。
でもチームで受けた健診の際に、何も言われなかったから、少なくとも重い病気ではないことは確かだ。
あ、これが噂のスランプってやつかな。その割には技のキレは悪く無いんだけどなぁ。
ふとフィールドを見れば、フィディオが手を振っていた。
見に来てくれている人達に応える事も大切な事だからな。
「マルコ!マルコ!!」
「…って、俺か!」
「?」
「わ、悪い
どうかしたのか?」
「どうもこうも無いさ!
ただマルコと話したくなっただけ!」
ずきゅうん。
ぐぉわ!これが噂のクリティカルヒットでやつなのか!?
痛い痛い何かよく分からないけど心臓を中心として胸辺りが痛い痛い痛い!!!
「最近マルコってば元気だけど元気じゃないみたいで…心配してたんだ」
「……grazie,フィディオ」
何とか冷静を保って礼を言うと、フィディオは何も言わずに笑った。
にっこりと、それはもう嬉しそうに。何も言わなかったんじゃない、言わなくても良かったんだ。その笑顔がそう語っているようで、俺は心臓が激しく鼓動したのを聞いた。
あ、俺、もしかして、いや、もしかしなくてもさ、
フィディオに恋、してるんじゃ、ない?
こう、どっくんどっくんて。どっくんどっくんてなるんだ、とくとく。なんてかわいらしいモンじゃなくて、どっくん! てなんだよ、なあオレ病気!?
「……それを何で俺に相談するんだよ!!」
「ったく……俺も暇じゃないんだ」
「いいじゃんか、デートに行ってもどうせフラれるんだから」
「なっ、何で知ってるんだよ!」
「オルフェウスの結束力舐めちゃ駄目だと思うぜ?」
「何故試合で生かさない」
相談相手→ジャンルカ君
title by 揺らぎ