「おいなまえ、眼鏡なんてかけてどうしたんだよ」

「…べ、勉強のしすぎで視力が」



どうでもいい嘘をついた。シリウスが信じたかどうかはわからないけど奴は改めてまじまじと私を、というか眼鏡を見てくる。や、やめて欲しい極力近づかないで欲しい。眼鏡に度なんて入っていない。これは、これは…


「泣いた?」


嗚呼…私の目のあたりの筋肉、もっと引き締まれよ馬鹿。


「ジリ…ウズ…」

「うをっ!やっぱ泣いたんだな!どうしたんだよ!」

「り、リーマズに…」

「ムーニーに何かされたのか?」

「ふ、フラれたあ!」

「…まじかよちょっ!」



とりあえずシリウスは驚いたのかよくわからないけど多分空を飛んだと思う。…ごめん嘘、私は涙が止まらなかったから本当は何も見えなかった。うわんうわんと泣く私にシリウスは何か言っていたけれどよく聞こえなかった。この眼鏡は泣いて腫れた目を隠すためにつけていた。だけど眼鏡って邪魔だ、涙が拭けないよ。
そんなことを考えながら同時に思い出した約1時間前…




「りっリーマス!」

「………」

「え?無視?」

「あ、やあなまえ。今リッリーマスって聞こえたけどもしかして僕のこと?リッリーマスさんのことを呼んでるんだと思ったから無視しちゃった」

「ごめんね噛んで!リーマスを呼んだんだよ!」

「うんじゃあもう一生僕の名前噛んだりしないでね。次噛んだらその舌邪魔だから切っちゃえばいいと思うよ」

「そ、それはちょっと痛そうだからいやだなあ。味とかわからなくなるし」

「あはは君が何かを味わって食べているなんて初めて知ったよ!」

「あ、あはははー」

「ところで僕に何かようかい?」

「う、うん。実はリーマスに聞きたいことがあるっていうか聞いてもらいたいことがあるっていうか…」

「なんだい?」

「リーマスはその…好きな人とかいるの?」

「なまえは?」

「へっ?」

「普通人にものを聞くときは自分から言うものじゃないかな?」

「え?私好きな人いるんだけどリーマスは?みたいな?」

「すごく馬鹿っぽいけどいいと思うよ。てゆうかなまえ好きな人いるんだ、誰?」

「り、リーマス!人にものを聞くときは自分から言うものだよ!」

「今、噛んだ?」

「…あ」

「あははいい度胸だね!さあ舌出してー」

「や、やめてくださああああい!」

「最後に言っておきたいことはない?」

「さ、最後に?えっとえっと…リーマスが好き!…あ」

「……へえ」

「えっと…うん…はい。好きです」

「そっかなまえは僕が好きなんだ」

「…う、うん」

「あっそ」

「…へ?」

「じゃあ僕はちょっと用ができたから」

「え、あの、ちょっと…」










「というわけなんです」

「恐ろしいすぎるだろムーニー…舌抜くって、もはや妖怪じゃねえか」

「うんシリウスなんかリーマスの名前呼んだだけできっと抜かれるんだよ」

「こえー!」



ひとしきり泣いた後はシリウスに話を聞いてもらった。私の玉砕劇を。シリウスには前々からちょくちょく話していたから親身になって聞いてくれた。「ドンマイ!次があるって!」と励ましてくれるかと思いきや、奴はずっとウーンウーンと唸りながら何かを考えていた。全くこの犬っころは空気が読めないな!あー泣きすぎて頭痛い!


「ごめんシリウス…ちょっと部屋戻るね」

「あ?ああ、てかなまえさあ」

「んー?」

「もう一回ムーニーと話してみたら?」

「…は?」



乙女の気持ちがわからないオス犬のことは放っておいて、おおっと一発喰らわせるのは忘れなかったけど、私は部屋に帰ることにした。談話室から出る瞬間、ふわりとチョコの香りが漂ってきて何だかリーマスを思い出しちゃった。ああまた目がジワジワ熱くなってくるもうやだ寝よう。









コンコン、



どれくらい経っただろう?うとうととベッドでふて寝していると部屋のドアがノックされる音で目が覚めた。でも今は誰とも会いたくない。居留守だ居留守。勧誘セールスお断りだ。


「なまえ?いるんでしょう?」


するとドアの向こうから聞こえてきたのはこともあろうにリーマスの声だった。嘘!もっと会いたくないよ!ああでもどうしよう開けなかったら絶対怒るよ!ドアぶち壊されても文句言えないよこれ!


「開けないんならこのドアに緑の光線放つよ!」


もっと恐いことになりそうだ!


「ま、待って!」


取り合えずぷっくり腫れた目はまた眼鏡で隠すことにした。



「いるんなら早く開けてよ」

「す、すいませんでした…あの、何のご用件でしょうか?」

「うん。てゆうか何その眼鏡?変だよ」

「…悪かったな」

「うん。外してよ」

「え?で、でも今は」

「邪魔だよ、キスできない」

「え、り、リーマス?」


そのままなぜかリーマスにキスされた。うわ、すごく甘い。チョコレートみたい!


「また名前噛んだ」

「…ご、ごめっ」

「このまま舌、噛みちぎっちゃおうかな」



キスの嵐が、止まらない!



彼からは欲情注意報が出ています


なまえがでていった談話室での様子をシリウスくんが話してくれるそうです。


「あれ?なまえは?」

「ようムーニー。なまえなら今さっきでていったぜ。てゆうかどういうことだよムーニー!」

「なんだいシリウス。そんなソファーからずり落ちて」

「ちょっと色々あったんだよまじ腹痛い動けない。それで何でなまえを振ったんだよ」

「振った?僕が?」

「そうだよ!お前もなまえが好きだって言ってたじゃないか」

「振ってないよ、ちょっとイジメすぎただけ」

「え?」

「好きな子ほどイジメたくなっちゃうよね、あはは」



そんなことを笑顔で言ったリーマスからはものすごいチョコレートの香りがしました。多分今さっきまでチョコレートを食っていたんだろう。そして彼は上機嫌で女子寮の方へ向かって行きました。

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