別に大きくて広くなくてもいいよ。あ、ただキッチンとバスルームは広いほうがいいかな。ベッドルームは朝日がいっぱい入る部屋がいい。リビングには二人がけのソファーをおいてそこで朝はセブルスの煎れたコーヒーをふたりで飲みたいな。


ホグワーツを卒業してすぐ同棲を始めた僕らの家はなまえが言った理想通りの部屋だった。



「セブルスー」

朝のコーヒーを飲んでいる時。もちろん煎れたのは僕だ。
エプロン姿のなまえは届いた手紙をチェックしていた。


「ルシウス先輩からきてるよー。今家族旅行でハワイにいるんだって」

返事の代わりにずずっとコーヒーをすする。なまえは「いいなーロコモコ!」とか言いながら手紙を読みはじめた。


「えーと…何々?」


セブルス、なまえ久しぶりだな元気にしているかね?
私は今ハワイでバカンスを家族と過ごしている。こちらはとても快適で充実した日々を送っているよ!強すぎる太陽と突き刺さる女性の視線は眩しそうに私を見ているよハハハッ!おっと!ちょっとこのビーチにはナマコが多くてね、注意しなければ踏み付けそうだっ!
そうそう!君達にもお土産を買っていこう!もちろんなまえには私がセレクトしたセクスィーなビキニを買おう!これを着て今度はふたりっきりで南国に行かないか?さあ、この胸に飛び込んでおいぐぶほォッ!!

ハーイふたりとも元気?ナルシッサよ!
あらやだ私ったらすごく耳障りな声が聞こえたもんだから思わずナマコを投げてしまったわ!あなたったらナマコなんか口にくわえて死ぬのかしら?いっそのことキラウエア火山のマグマでシャワーでもしてればいいのよウフフ!
ハワイは本当にいいわよ!なまえ、セブルスに休暇をとってもらって今度ふたりで来たら?またお茶しましょうね。




「…だって」

「相変わらず賑やかな夫婦だな」

「仲良しだよねー」

「漫才だな」

「あ、ドラコくんからもメッセージがある!」


とおさまとかあさまはあんなんだけど、ほんとはなかよしだ。きのうぼくがねたあとふたりはチューしてた。
なまえ、だんなにすてられたらぼくがもらってやってもいいぞ。





「きゃー!超かわいいっ!」

「…(親子そろってこの家族は!)」

「いいなー!ドラコくんみたいな子供が欲しいね!」

「はっ?いらん!」

「ちょ、セブルス何怒ってるの?」

「べ、べつに怒ってなどない!」

「うそだー!そんなに怒ったら頭の血管ブチ切れて死ぬよ?」

「…そんなこと軽はずみに言うな」

「だってこの前レギュラスが言ってたんだもん」

「…レギュラスめ、変な知識をなまえに植え付けよって…」



笑っているなまえは手紙をテーブルに置くとコーヒーに手をかけた。


「コーヒー冷めちゃったね、煎れ直そうか」


「僕がやる」

立ち上がったなまえのカップを取ってもう一度座らせ、自分のカップを持ってキッチンに向かった。すると後ろからフフッと小さくなまえの笑い声が聞こえた。



「どうしてこういう時って、男の人って優しくなるんだろーねー?」

「………」

「パパが優しいでちゅよー」


自分のお腹をとんとん、と叩きながらわざとそういう口調。もう、大分大きくなって、もうすぐ会える。

なまえには僕との子供が宿っている。



「名前はセブルス・ジュニアにしよっか!あ、でもそしたら頭はいいけどすごく陰険根暗で髪がベトベトした子になっちゃいそう」

「………」

「じゃあなまえ・ジュニアにしよう!そしたら可愛くてみんなに好かれてすごくいい子に育つよきっと!」

「だけどきっと馬鹿でドジでよく食っていつもレポートの締め切り守らない子に育つぞ絶対」

「ひ、酷いよセブルス!」

「お互い様だろお前だってさっき僕に言っただろ!」

「あれは事実じゃん!」

「お前のだって事実だろ!」

「きゃーパパがいじめまちゅよー!」

「ママはやっぱり馬鹿だぞ!」





パパ、ママ


「ママだって」

「…うるさい、ほら冷めるぞ」

「えへへーおいしー」

「…単純だな」



ふたりで笑いあって、でももうすぐさんにんだな、てそんなことを思ったある昼下がり。





トゥー・ビー・ハニー

(あ!今蹴った!きっと「ママをいじめるなー」って言ってるんだよ!)(いや「しっかりしろよ」って言ってるんだろう)(えー!)
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