「なあーなまえー!開けてくーれーよー!」



シリウスと喧嘩した。
夕食の席でおいしいおいしいチキンを食べていたら隣に座ったシリウスが言った。「おいなまえ、こんなこと言いたくないけどあれだなお前。…少し太った?」はあ?てめェ何様のつもりだよ。あんたなんかにそんなこと言われる筋合いないし。関係ないでしょフーン。と、本当にどうでもいい奴ならそんな風に出来たかもしれない。最悪なのは、シリウスがどうでもいい奴じゃないからだ。シリウスは私の彼氏だもの。ねえ普通彼女に向かってそういうこと言うの?やっぱあんた何様のつもりはあ?…何て言えず、「…馬鹿、サイテー」と言い捨てて部屋へ走ってきた。…べ、別に乙女気取ったわけじゃないんだからね!そして後を追いかけてきたシリウスは、ああやってずっとドアの向こうで叫んでいた。


「悪かったよ、俺ぽっちゃり系でも愛せるよ」


「てめぇ傷口に塩塗ってんじゃねぇよ」


「お前最近、口も悪くなったんじゃないか?」


「誰のせいよ」


「………リーマス?」


「何でリーマスが出てくるのよ。リーマスが悪いのは口じゃなくて性格よ」


「…言えてる。なあ出てこいって」


「うるさい馬鹿。どっか行け」


「出てきてくれるんだったらどっか行く」


「じゃあシリウスがいなくなったら出て行ってあげる」


「言ったな!」





バーカ。それじゃ会えないじゃん。本当馬鹿。ブラック馬鹿。レギュラスに嫌われてるくせに。



「シリウス最近加齢臭するよ」


「う、うそだ!」


「うそじゃないよ。この前シリウスの枕からお父さんの臭いがした」


「まじかよ…気をつけてたのに…」


「いや…あれはもうおじいちゃんの臭いに近かったかも」


「うわすげーショック!」



シリウスを虐めるのは楽しい。あいつは単純だから。シリウスから加齢臭が本当にするのかは知らないけどこれは楽しい。…でもシリウスに抱き着いた時する匂いを嗅ぐと何だか落ち着く。あれはお父さんの臭いとは違うけど。もちろんおじいちゃんとも。




「なあ悪かったよなまえ。出てこいよ抱きしめてやるから」


「やだよ。腰にお肉ついてて腕まわんないんじゃない?」


「大丈夫だよ。もし回んなかったらなまえが俺を抱きしめてくれればいいからさー」


「おいてめぇ、もしって何だもしって。てめぇのその細い腰粉々に折ってやろうか…?」


「うんうん。折ってもいいから出てこい、ほら」




…何か言ってる。正直すごくしつこい。あいつあんなに執着するタイプだったっけ?別に今じゃなくてもいつかトイレに行きたくなったりお腹が減ったら出ていくのに。こんなことされたら「そんなに会いたいの?」とか思っちゃうじゃん、馬鹿。





「そんなに会いたいなら…」


「会いたいなら?」


「そのドア突き破ってでも入ってくればいいでしょ?」


「…言ったな?」


「え?」






バコーン!!



何とも古典的な音と共にドアは吹っ飛び、そこには片足を上げて得意げに笑っているあいつがいた。…おいちょっと待て。ふざけんな。



自己満ヒーローはお引き取りくださいませ

(ちょ、お前!まじで突き破るなんて頭おかしいんじゃないの!?)(おーもっと怒れ。そしてカロリーを消費しろ)(ムキー!)


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