今日は彼のもとへ行く日、白いお化粧と色とりどりのバランスいいお洋服を着て出かけるわ。
髪型よし、服装よし、化粧よし、リップを塗って準備はおしまい。時間もあるし気持ちを落ち着かせるためにもお茶でも飲もうかな。
そろそろ時間、部屋から出て靴を履く。すぐにでもあなたのもとへ行ける。一歩足を踏み出した。だけど溶けるように体は力を無くして崩れていく。崩壊 時、既に遅し
「とまぁ、食べる寸前に傷つけられた5号(18センチ)のデコレーションケーキ(生クリーム、イチゴメイン)の気持ちを紙芝居にしてみたけどなまえ、分かってくれたかな?」
「…なんで紙芝居か聞いてもいいですか?リーマスくん」
「分かったかな?」
「(ひぃいいぃ!)とても分かりやすい説明をありがとう!」
「それでこのケーキはどうしたらこうなるのかな?」
「勢い余ってしまいました」
「かわいそうに…真っ白で綺麗に着飾っている罪のないケーキ、指を突っ込まれるなんて」
「…その言い方はちょっと…卑猥じゃないでしょうか?」
「なにか、言った?」
「(黒いよ!誰か助けて…)いえ、私の過ちでした。ケーキに申し訳ないです、いやほんとう」
久しぶりのホグズミード、ハニーデュークスで新製品のケーキができるからって予約までした。2人で取りに行って談話室まで運んだのはいいけれど、箱から出す際私の指が当たってしまったがために白い生クリームの塗装は呆気もなく穴が空いてしまった。今や完璧な生クリームデコレーションケーキは存在しない。
「なまえ、新製品を楽しみにしていたのは僕もだから分かるけどこれはないよ」
「ごめんね!ごめんね!ハニーデュークスにもケーキにもリーマスにも申し訳ないです」
「こればかりは魔法で直せないからね」
どうしようどうしよう!せっかくリーマスとケーキを楽しみにしていたのに私が壊してしまった。申し訳ない気持ちと自己嫌悪でどんどん気分が下がってくる。
「なまえなら直せるよね?」
「えっ!?私そんなに器用じゃないよ!だけどバターナイフとかで直してみるよ!」
「バターナイフじゃなくて、指で」
「…指?」
「そう、指。あ、生クリームが付いた指はちゃんと舐めてあげるからね」
「なめっ…!?」
これは相当リーマスさんは怒っていらっしゃいます。こんなリーマス久しぶりに見るよ…前はシリウスがリーマスのチキンを勝手に食べた時(まぁ、自業自得だけどね…)
あの時ほど怒ってないみたいだけど、とにかく笑顔が怖い。笑顔が黒いよリーマスくん。
「…ごめんねなまえ」
「え?違うよ…謝るのは私の方だよ」
「いや、なまえに意地悪しすぎちゃったね」
近くに寄られ頬にキス。先ほどよりも近い距離にリーマスが。落ち込んでいたのに私は単純でドキリとしてしまう。リーマスの暖かい手が私の手を包む。安心して一粒涙が頬を伝った。
「なまえが反省しているのちゃんと分かったから」
「…許してくれる?」
「もちろんだよ。じゃあ楽しみにしていたケーキを食べようか」
「…うん。リーマス、ありがとう」
にっこりといつもの笑顔で「どういたしまして」と返された。つられて私もふにゃりと笑う。ケーキナイフを取り出してデコレーションケーキを食べやすくカットする。柔らかい生クリームはナイフによって引き裂かれる。そんな生クリームを見て、私はリーマスとは引き裂かれずにくっついたまま、ずっと隣にいたいと切に願う。
「リーマスには大きいのあげるね!」
「もちろんだよ」
「ですよねーはい、どうぞ」
君はケーキのように甘い
20100118
「なまえ、ほっぺに生クリームついてるよ」
琥珀っちより
誕生日の贈り物!ありがとー(^O^)