僕はここ最近とても穏やかな日々を過ごしている。例えば、すごく清々しく朝を迎えることができる。食事を一口一口味わいながら、おいしく食べることができる。談話室で何気ない会話をしながらくだらない冗談に笑うことができる。夜眠る瞬間に今日のことを思い出していつの間にか眠りについていたりする。とても何気ないことだ普通のことだ。でもそれが実は特別でとても大切なことだと気が付いた。
そう感じることができたのは、なまえが側にいてくれるからだと思う。彼女と僕はまだ恋人同士になったばかりだった。それまで僕は知らなかった。大切な人が側にいるだけで世界はこんなにも輝いているんだ、ということを。嗚呼、僕は今確かに幸せだ。きっと回りから見たらいつもと変わらない日常にいつもと変わらない僕がいるだけだろう。だが僕は違う。僕は今、とても満ち足りた日々で漂っていた。
そして今日も図書館にて君を待つ。この時間さえ、愛しく感じる。









「…………」


「先輩?なまえ先輩?」


「ん?ああレギュラスくん、どうもこんにちは」


「どうも。何やってるんですか本棚なんかに抱き着いて」


「だ、抱き着いてなんかないよ!違うんだよあれ見てよ!」


「あれってスネイプ先輩?」


「うんそうスネイプ。マイダーリン・スネイプ。今日も薄気味悪いスネイプ」


「ちょっと惚気てすごくけなしましたね」


「スネイプ最近、変わったよね…」


「そうですか?今日もいつも通り確かに薄気味悪いですけど」


「ううんそんなことない。なんか最近のスネイプは輝いてるの」


「え?」


「前は本の匂いでも嗅いでるのかってくらい猫背だったくせに、今日は頬杖なんてついちゃって!色気づいてる!」


「…色気」


「それだけじゃないんだよ!例えば前はスネイプに「一緒にご飯食べよー!」って言っても私のこと睨んで「飯がまずくなる…」とか言ってたのに、今なんか「ほら僕の糖蜜パイやる」とか言うんだよ!何か企んでるとしか考えられない!もう思わず口から豆のスープ吹き出したよね、うん」


「ああ、この前先輩が目の前にいたルシウス先輩に口から豆噴射した時ですか」


「そう!だからあれ私悪くないの!」


「あの後のルシウス先輩ったら本当コンソメ臭かった」


「それだけじゃないんだよ!魔法薬学でも前は「お前とペア?ふんっ、どうせ何作っても泥水になるくせに」とか「おいちょっとは手伝え」とか言ってたのに、最近は「今日は成功するといいな」とか「それは飛び散るから僕がやる」とか言うの!もうどうしちゃったのー!」


「よかったじゃないですか、手伝わなくて」


「うん。おかげで最近の魔法薬学調子いい。私ただ鍋掻き混ぜてるだけで良とった」


「スネイプ先輩にお礼を言うべきですよ」


「やだよ!スネイプ最近私に対して変なんだもん!」


「…それは前から若干酷かったんじゃないですか?」


「もっと酷くなったの!最近目を合わせてくれないし、あんまり喋らなくなった!」


「え?」


「前はギロリと睨みつけながらちゃんと見てくれたし、「おいこっち見るな」とか、口を開けば「馬鹿か」とか言ってたんだよ!最近は「へえー」とか「ああ」とか…どうしよう…早くも倦怠期かしら?」


「その心配は無いような…」


「最近調子悪いのかな?前は月光に照らされた降雪のように真っ白な肌が、なんだか豚みたいな色だし」


「健康的と言ってください」


「それに最近スネイプ太った?もしかしてストレス太り?」


「幸せ太りではないんですね」


「あんなにねっとりした髪がちょっとサラサラしてる?」


「愛って人を色んな意味で変えてしまうんですね」


「…やっぱり、変」


「なまえ先輩の見解がね」


「私、きっとスネイプに捨てられるんだ…うわーん!やっと両思いになれたのにー!」


「ちょ、なまえ先輩落ち着いてください!ここ図書館!スネイプ先輩に気づかれますよ!」



「なんだレギュラス…え?なまえ?な、なんで泣いているんだ!?」


「うわーん!そんな目で見ないでええええ!」


「ちょ、なまえ!ま、待て!」










「…行っちゃいましたね、スネイプ先輩」



「一体何があったんだ?レギュラスが泣かせたのか?」


「まさか」



「目…そんなに僕は目つき悪かったか?」


「いえ心から心配の眼差しを向けてました」


「じゃあ何が…」


「なまえ先輩はもっと冷ややかな目で見てほしいんだと思いますよ」


「………は?」


「それじゃあ僕はこれで」



「……………意味がわからない」




(好きなやつにそんなことできるか!)

(どうしよう…どんどんスネイプが変わっていっちゃう!何あの優しそうな目!あんなの…スネイプじゃない!)




空回りしてる二人。







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