誕生日?そうだなあ…私は大切な人と特別な時間を過ごしたい!

そう、確かに先輩はそう言ってた。こんな僕だけど実はもう何日も前から色々考えていたんだ。先輩の誕生日はちょうどホグズミードの日でもあるから、僕は苦手だけど先輩が行きたいっていってたハニーデュークスに行って、一番大きなケーキを買って馬鹿みたいに派手なローソクをつけてもらう。そして三本の箒でバタービールを飲みながら普段言えないようなことを思い切って言って、そしてプレゼントを渡そうと思っていた。この僕が何日も何日も悩んで決めたプレゼントだ。そして寮に帰ったら僕の部屋で朝まで一緒にいたいと思ってた。別にあんなことをする気はない。いや、別にしたくないわけじゃないんだ。ただ、一緒にいれたらいいと思ったんだ。だから無理言って同室の奴にも夜は部屋を空けてもらった。いつもならすごく怒るところだけど今日だけは僕のベッドでケーキを食べても怒らないことにするし、歯磨きしなくたってキスしてやろうと思ってた。だって誕生日だから、とても特別な日だから、だから。

でも、こんな仕打ちってあるだろうか?




「ごめんレギュラス。私、一緒にホグズミードには行けない」


………は?

一瞬にして頭が真っ白になった。目の前にいる彼女は今僕に何と言ったのだろう?


「な、何と?」

「うん。だから、一緒にホグズミードには行けない。他の人と約束しちゃって」

「ほ、他の人?」

「うん」

「だ、誰ですか?」







「シリウス」






きっと今、この地球からずっと遠く、遥か何億光年と離れた宇宙の片隅で、名も無き星が消滅した。僕の頭ではそんな音が聞こえた。
よりによってあの兄さん、シリウス・ブラックだなんて…





「…レギュラス、落ち着け」

「意味がわからない意味がわからない意味がわからない」

「落ち着くんだレギュラス!ちょっとルシウス先輩も何とか言ってくださいよ」

「本当に何故なんだろうなレギュラス…何故なまえは、私ではなくシリウス・ブラックを選んだのだろう?私も不思議でならない」

「スネイプ先輩、先輩の愛する闇の魔術で一番苦しみながら死ぬ呪文を教えてください。でなきゃ一番苦しみながら死ぬ薬品作ってください」

「まずシリウス・ブラックを呪ってからルシウス先輩に薬品を飲ませるという手段もあるぞ」

「いいですね、それでいきましょう」

「ま、待て二人とも!冷静に、冷静に。楽しんで悪かった」

「本当ですよ僕で楽しむだって?あんた何様だこの虫けらが糞転がしの糞が!」

「虫けらでさえなくなった…」

「何故よりによって兄さんなんでしょう…僕は兄さんに負けたということなんでしょうか…確かに先輩と兄さんは同じ寮で僕より付き合いが長い…だけど恋人は僕だっていうのに…」

「レギュラス、お前は決してシリウス・ブラックに負けたりしていない。レギュラスの方が何倍もましだ」

「スネイプ先輩…」

「レギュラス…」

「全然嬉しくないのは何故でしょう」

「………悪かったな」

「そうだレギュラス!こんな時には気晴らしにパアッとやるのが一番だ!私のガールフレンド達を呼ぼう!次の恋だ、次の恋!」

「嫌ですよルシウス先輩が紹介する女性なんてどうせみんな先輩の財産狙いなんです」

「グサアッ!」

「それにまだ、僕はなまえ先輩のこと…諦めた…わけじゃ…」

「………」

「もし仮に、本当に万が一先輩が言っていた、誕生日は大切な人と過ごす、というのが僕じゃなくて、兄さんだったとしても、僕の先輩を思う気持ちは、全く、変わらないわけで…」

「…………」

「そりゃあ、少しは恨みます。兄さんなんか呪ってやりたい。けど、だけど僕は…僕はなまえ先輩が、好き、だから…」


僕らしくない。ずっと信じていた。僕と同じくらい先輩も僕を好きでいてくれていると。大切な人が僕だと何の疑いもなかった。だから僕はそんな大切な人のために誕生日を祝いたい。生まれてきてくれて、僕と出会ってくれて、僕を好きになってくれてありがとう、と二人でただ、一緒に感謝したかったんだ。
だから、今は怒りより憎しみよりずっと、先輩が隣にいてくれなくて悲しいんだ。



「レギュラス」

「はい」

「その気持ち、ちゃんとなまえに伝えてやったらどうだ」

「え?」

「ドア、開けてみろ」



スネイプ先輩に言われるがまま、わけもわからずドアを開けた。するとそこには今まさにそのドアをノックしようとしていたなまえ先輩がいた。僕らは目を見開いてお互いの姿に驚いた。


「ビックリしたー」

「先輩…」

「あ、あのね!レギュラスに会いに来たの!」

「あ、はい。えっと…」

「中入ってもいいかな?」

「ど、どうぞ」



さっきまでそこにいたスネイプ先輩とルシウス先輩はいつの間にかいなくなっていた。きっと気を利かしたスネイプ先輩がルシウス先輩を引っ張ってってくれたのだろう。先輩は大きな包みを膝の上に乗せてソファーに座った。


「えっと…兄さんとホグズミードに行ったんじゃ?」

「うん行った。もう帰ってきた」

「そう、ですか」

「うん」

「うん」

「レギュラス」

「はい」

「隣、座って?」

「…はい」

「レギュラスにプレゼントがあるの」

「え?」

「はい、これ」



そう言って先輩は笑顔で包みを僕に差し出した。


「馬鹿じゃないですか、先輩は」

「えー?」

「今日は先輩の誕生日なんですよ!なのに何で僕がプレゼントを貰うんですか!」

「おかしい?」

「おかしいです!すごくおかしいです!」

「だって、レギュラスにすごく感謝してるんだもん」

「え?」

「私が生まれて、レギュラスと出会えて、レギュラスに好きになってもらえて、すごく感謝してる。今日は私の誕生日だけど、だからこそレギュラスにありがとう、て言いたいんだあ」



先輩は相変わらず眩しすぎる笑顔を僕に向けてくる。馬鹿だなあ、本当に。呆れるくらい馬鹿で、単純で、本当に、大好きだ。


「レギュラスがどんなの好みかわからなかったからシリウスに付き合ってもらったんだけど、シリウスったら全然当てにならなくて。あ、そういえばハニーデュークでケーキも買っちゃった!これは重たかったからシリウスに持たせたけど、あいつ荷物持ちくらいにはなったかなー」

「先輩」

「ん?」





Happy Birthday

to my SweetLover!!



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愛を込めて 政宗
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