「ねえ、先生と付き合うってどう思う?」


年頃の女の子達の話なんて大抵決まってる。美容とファッションとちょこっとの陰口、それからやっぱり恋愛について。ただひたすら、誰はかっこいい、誰は付き合っている、誰は告白しただのそんなことで盛り上がっている。だがそんな普通の話に飽きた彼女達は一度想像を巡らせることに夢中になる。その豊かな知識はただ勉強のためにあるわけはないのだ、勉強なんかよりももっと素敵でハッピーで、尚且つくだらないことに頭を回転させている。



「えー!そんなこと考えられない!」

「でもおもしろそうね」

「でもホグワーツにはいい先生なんていないじゃない」

「例えばの話、そりゃあホグワーツはちょっと…」

「そんなことないじゃない!ほら、ルーピン先生なんて素敵よ」

「あーそれ私も思った!」

「そうかしら?私はもっと健康的な人がいいわ」

「ちょっとー、ルーピン先生を馬鹿にしないで!」

「そういえば、ルーピン先生とスネイプ先生って同じ年齢くらいよね」

「確かに。でも、スネイプと付き合うだなんて……」














「ありえないって。みんな笑ってた」

「…ん」

「ちょっとスネイプ先生ー、聞いてますー?」



所詮はみんなみんなくだらない妄想話、だけど彼女達の行き過ぎたその能力に私は終始冷や汗をかいていた。会話に飛び交う彼の名前を聞いた時、その動揺はピークを迎えた。そう、私はホグワーツ教授スネイプ先生と…付き合ってるの?先生?



「ねえ先生ってば」

「…ん」

「聞いてる?」

「…んー」

「んーって…私の話、聞いてた?」

「聞いてるも何も、お前一体何度その話をすれば気がすむんだ」

「えーそんなに話してた?」

「自覚が無いのか」

「んー…5回くらい?」

「89回だ、かれこれもう何時間も…」

「あ、あと1回で90だ。どうせなら100回を目指して」

「目指すな。忌ま忌ましい」

「ちぇ…」

「ほら、早く寝ろ。もう真夜中だぞ。我輩、お前のせいで寝不足になったらうんたらかんたら」

「わかりましたよ。ほらほらスネイプ君、おねんねしましょーね」

「おいこら今すぐ引きずり落とすぞ」

「それはパワハラですか?」


先生の部屋、先生のベッド、先生の腕の中。ぬくぬく。
星が空に散らばって夜空は絵を描く。真っ暗な空で踊る星を瞼に浮かべておとなしく目を閉じた。



「ねえ先生、寝た?」


返事は、無い。


「私、先生が好きなんだあ」


陰険だし根暗だし髪がギトギトしててちょっと汚いし真っ黒で蝙蝠みたいだし薬品臭いしスリザリンばっかり贔屓するけど、けど…


「だあい好きなんだ…」



ぎゆうっと先生に抱き着く。やっぱり薬品の臭いがする。すると背中に回された腕の力が強くなり、更に先生の胸に顔を押し付けられた。


「い、痛い痛い。先生起きてる」

「ふん、前半が聞き捨てならん。お仕置きだ」

「痛い痛い!ちょっと本当に!顔面潰れる!」

「潰れてしまえ。今よりはましな顔になるかもしれん」

「ちょっとそれどういう意味ですか」



顔をぐいと上げると、眉間にシワを寄せて口元だけを上げて笑う、愛しい貴方。


「先生、」

「なまえ、」




そのキスは、流れ星の味がした。





星屑が舞い散れば

きみとの永遠を願うだろう





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