「あたし、ルシウスを初めて見た時は白馬の王子様かと思った」


パーティーの席にて。
煌びやかに着飾った紳士淑女の中、壁にもたれシャンパングラスを傾ける男女がいる。


「何を言う。今だって十分白馬に乗れるだろう」

「やだよ気持ち悪いよ犯罪だよ」

「君って奴は…」

「あははっ」







「つまり君は…私が好きだったのか?」

「え?何で?どうやったらその答えにいきつくの?」

「私のことを王子様と言っただろう」

「うん。今となってはすごく大きな勘違いだったなって、そういう話」

「そうか」

「うんそう」

「…若干傷付いた」

「まあ昔の話よ」

「じゃあ今は好きなのか?」

「だからどうしてそうさあ…その自信はどこから来るのよ」

「自信だけでここまで来たのだ」

「うんそうだったね」





広いパーティー会場を見渡す男女。ふと男と目の合う淑女がひとり。男がにこり、と笑って手を振れば、淑女も恥ずかしそうに手を振り返す。隣の女はつまらなそうにその一部始終を見届ける。



「ほらそういうところがさあ」

「何だ?」

「あんたの天性だよね、ルシウス」

「ああ、そういうことだ」



美しいプラチナブロンドが彼の笑いと共に揺れる。



「白馬の王子様とまではいかなくていいけどさ」

「ん?」

「あたしの王子様くらいにはなりなさいよ」

「何だいそれは?」

「あたしの精一杯のデレ」

「ふふっ…それじゃあ有り難く」





会場のメロディーが変わる。人々は徐に側の人と手を取り合う。



「姫、お手をどうぞ」


男が差し出した手に顔を赤らめた女がおずおずと自分の手を乗せる。







チュッ




その手に落とされた、優しいキス。
男は得意げに笑う。女はさらに顔を赤らめた。



手の甲にKiss


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