バンッ!と勢いよく寮の扉が開いたかと思うとそこに立っていたの真っ青な顔色のなまえ先輩だった。明らかに目は虚ろだしこっちに歩いて来る足どりもフラフラと不安定だ。
「先輩?」
「レギュ…」
力無く僕の名前を呟き、ゆっくり目を閉じると一筋、涙が零れていた。そしてついに僕に倒れ込むようにすがり、小さな吐息が荒れているのを耳元で感じた。
「血が…止まらない…」
「え?」
「痛い、よ…」
「ちょっと、先輩?」
「助けて…レギュ…」
「先輩!」
「で、生理痛が痛すぎて死にそうだったと」
「どうもお騒がせしました」
「先輩悪いこと言いません。死んでください」
「いやたがらゴメンて」
心配して損した。どこを探しても先輩に外傷は無く、いったいどこを怪我したのかと聞いたら生理痛が痛くてもう動けないとのこと。呆気にとられてしばらく動けないでいると先輩がいきなり悶えだして(いきなり「う!……キタッ!…」と言ってラマーズ法をしだした)そんな先輩を担いでベッドまで運んだ。本当に世話がやける。ああ肩凝った。
「レギュたん、怒ってる?ごめんね」
「もういいですよ」
「えー怒ってるじゃん」
いや本当は別にもういいんですけど。先輩がはあはあと荒い息で僕に倒れ込んで来たときは本当に生命の危機なのではと心臓が大きく波打った。だから本当は今心から安堵している。まあそんなこと絶対に言ってあげませんけど。
「レギュたん、悪いんですが水とってくださいます?」
「どうぞ」
「ありがとー」
「てゆうか何か食べたらどうですか?顔悪いですし。あ間違えました顔色悪いですし」
「いや食欲ない。てかわざとでしょ絶対わざとでしょ」
「とるに足らないことです。それなら医務室に行って何か薬とか飲んで来ればいいんじゃないですか?」
「そういう問題じゃないんだよレギュラス君」
「気持ち悪い雰囲気漂わせないでください」
「酷いなー。女の子はみんな大変なのー!…あー痛い痛い!」
「まったくもう、大丈夫ですか?」
「何のこれしき…レギュたんとの可愛いベイビーのためだと思えば…!」
「勝手に宿そうとしないでください忌ま忌ましい」
「酷いわ!この子に謝って!…て、痛いいい!」
「ほら先輩が無駄に騒ぐからですよ」
「うーん…うーん…」
「悶え苦しんでいる先輩を見るのは中々いい眺めです」
「ブラックすぎるよ…」
「レギュラス・ブラックですから」
「そーですね…」
「ねえ」
「はい?」
「あのさ、お願いがあるんだけど」
「……何ですか?」
「お腹、撫でて欲しいです」
「………」
「だ、だめ?」
「高いですよ」
「…出席払いで」
そっと彼女の下腹部に手を添えてゆっくりできるだけ優しくそこを撫でてやった。相変わらず顔は青いがなまえ先輩は気持ちよさそうに目を細めた。そして僕の手を自分の手と重ねた。
「今、こんなかで血の壁がべりべり剥がれてんの」
「かなりグロテスクですねそう言われるとすごく痛そうです」
「いや本当一回経験するべきだってこの痛み」
「いやですよ何で僕が」
「レギュたん注射とかでも泣きそうだもんねー」
「………」
バシッ!
「ぎゃ!ちょっと叩かないでよ!」
「早く血の壁が崩れるかもしれませんよ」
「今絶対憎しみこもってた!」
「フフフ…」
「ブラック・スマイル…!」
だが思ったより元気は元気でよかった。先輩の手は相変わらずお腹を上下する僕の手に添えられていてすごく、暖かい。思わず僕も安らかな気持ちで笑顔をこぼした。
「頑張ってくださいよなまえ先輩、
………僕の子供のために」
「うん………え!?」
ちいさくもえて
(「これってプププ…プロポーズ!?ちよ、ちょっとレギュラス!もっとムードとか考えてよ!」「やれやれ贅沢な人ですね」)