気が付いたら山の傾斜の辺りがうっすら明かりを点していた。白々しい朝が生まれたのだと僕は埃まみれで皹の入った汚い窓からまだ見えない太陽を目を薄くして見ていた。
喉が痛い頬が痛い体のあちこちが、胸が痛い。自分で叫び散らしたんだ、自分で傷つけたんだ、なのに傷付いても傷付いても、僕はただ自分が憎かった。
太陽が好きだ。ずっと太陽の下にいたい。月は僕が嫌いだから僕も月が大嫌いだ。
ギシギシの軋む床。満月の夜何度となく訪れた叫びの屋敷。冷たかった寂しかった。どうすればいいんだろう、どうしろというんだ僕はこんなんだ。怪物だ。誰も、僕を見なければいい。

涙で滲む天井は、やっぱり汚かった。










「リーマス?」



ぎー、と木の擦れる音がして扉が開いた。
後ろ光りが眩しいけれど、僕の名前をとても小さな声で彼女が呼んだ。その輪郭が朝日に照らされて縁取られて美しい、眩しい。




「なまえ、」

「おはよ!」

「…おはよ」




へへっ、彼女はと顔をくしゃくしゃにして笑うもんだから、僕もつられて笑ってしまった。そのとたんに、涙が一筋頬を流れていった。



「迎えに来たよ!ホグワーツに帰ろ!」



屈託のない表情でこんな僕を見る、その顔もいつもと全く変わりがなくて、僕の胸を貫いた。
でもそれは決して自分で自分を傷つける時のような痛みじゃない。なぜだろう。その笑顔が僕を貫く度に温かくなる。こんな憎い僕に笑いかけてくれる。側にいてくれる。助けてくれる。
でもそれだけで、僕は、


「本当はね、ジェームズとシリウスと来ようとしたんだけど、ジェームズとシリウスが馬鹿騒ぎしてフィルチに見つかっちゃったの。でも二人が私だけ逃がしてくれた!」

「そっか、」

「うん!だから早く帰ろ?そろそろフィルチのお説教も終わるんじゃないかな?それに朝食の時間だし」




立てる?そう言って小さな手を僕に差し出してきた。

僕のこの手が彼女に触れてもいいのだろうか。



「みんなリーマスのこと待ってるよ」












窓からは生まれた朝日が指していて皹のせいか不格好に反射して彼女を照らした。




「、ありがと」


彼女の手は暖かい。

僕はまた、涙が出た。








(友よ、永遠にありがとう)
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