卒業生式辞


「あれは、まあどってことないある春の昼下がり」


「回りの人々が一流企業や官僚職に就職する中」


「まあなんとなくなってみるかと思い」


「ぶっちゃけそんなに乗り気じゃなかったけど」


「僕たち」


「私たちは」


「死喰い人になりました」


「なりました」


「ビックリするほどの安月給」


「安月給」


「そのわりにキツイ勤務時間」


「勤務時間」


「もちろんボーナスも無し」


「ボーナス無し」


「社員旅行は近場の森で自費でキャンプ」


「自費でキャンプ」


「夕飯のカレーのお米を焦がし、さらに肉を野性の野良犬に盗まれ、我が君が「いっけね!ルー忘れちった」とか言ってフルボッコ」


「フルボッコ」


「その日のご飯は近くのコンビニでカップ麺でした」


「カップ麺でした」


「年末の忘年会で行ったカラオケ」


「カラオケ」


「我が君はずっと歌本を読んでいて、ルシウス先輩は曲入れ係で、ベラトリックスはマイクを離さず延々と80年代の失恋ソングを歌ってました」


「歌ってました」


「レギュラスは「年末は家族と南の島の別荘で過ごしているんです」と毎年見え見えの嘘をついていました」

「嘘をついていました」


「でも今となっては」


「どれもいい思い出です」


「親切な先輩方」


「可愛い後輩達」


「お父さん、お母さん」


「そして、我が君…」


「僕たち」


「私たちは」


「今日、死喰い人から旅立ちます」


「旅立ちます」


「みなさん今まで」


「「ありがとうございました」」











「うぐ……ん…」


「ちょ、ちょっと卿泣かないでくださいよ」


「な、泣いてなんかっ…んぐを…んぴ…」


「あんた子供ですか!」


「ほ、本当に辞めてしまうんだなあ」


「ええまあ…何だかんだお世話になりました」


「本当だよ貴様ら。俺様がいなかったら今頃どうしてたか…」


「多分、平穏無事で何ひとつ問題なかったと思います。むしろ今よりマシな生き方ができたと思います」


「ああそうか…でもお前はあえて危険な道を選んだんだな…俺様は知っているぞ」


「え?いやそんなわけ…」


「卿、」


「お、何だセブルス」


「最後ですから、どうしても言いたいことがあるんです」


「な、何だ急に改まって…」


「実は卿のこと…」


「あ、ああ……」


「ずっと……心配してたんです…」


「な、何がだ?」


「感じるんです………加齢臭」


「………」


「それだけです」








「それじゃあ卿、今まで本当にありがとうございました」


「ああ、気をつけてな」


「またどこかで会ったらその時もよろしくお願いします」


「ああ、わかってる」


「あ、後のことは全部ルシウス先輩に任せてありますから」


「ああ、そうか」


「…任されました(特に卿のお守りとかお守りとかお守りとか)」


「それではお元気で」


「お前たちもな」











数日後、死喰い人を旅だった2人から手紙が届いた。



「拝啓我が君へ
今日はご報告があります!実は私たち、死喰い人だった経験を活かして、不死鳥の騎士団に入りました!こっちは有給も効くし残業代出るし社内はまあまあ綺麗だし最高です!
仕事も毎日充実しています!近々敵の本拠地に乗り込む予定です。死喰い人だった経験を活かして頑張ります!
ではまたお会いしましょう!」








「………え?騎士団?」





結論:世界は今日も平和です



(おらあああ!ヴォルデモート出てこいやあ!)(我が君、お久しぶりです。おっともう我が君じゃないんですね、失礼しました)(あ、ああ二人とも久しぶりだな。元気そうでなによりだ)(はい元気です。そんなことより我が君)(な、何だ?)(死ねごらあああ――!!)(やっぱり!?)




おしまい\^0^/

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