La Vita e Bella

「私たち、これでいいんですかねー」

「まぁ、今が間違いだと思うならこれまで全てがムダですからね。
別に私はそうは思いませんし、足場すら危ういのに立ち止まってもいられないでしょう。」

かじりかけのトーストを片手に、新聞へと落としていた視線をこちらへと戻したものだから、そんな生活感の滲み出るランスの姿をまじまじと観察していた私とバッチリと目が合う。

「わぁーランスさんらしくない、らしくないよ。
てっきり、キッパリ無かった事にでもして流して生きてくのかと。器用そうだし。」

「人を何だと思ってるんですか。」

カップをテーブルへと置き、腕を組みなおす。
そして、私に向ける人を見下すような笑いをうっすら浮かべる様は知る限りは変わらない。

近頃気が付いたのは、実は少し猫舌で無意識でか、ふぅふぅと息を吹き掛けてからチミチミとコーヒーを飲んでいること。
そして、そのコーヒーすら実はあまり好みでは無いこと。
本人は平気な顔をしているつもりだろうが、半分ほど飲んだところでミルクを入れていたり、モゴモゴする安い食パンと一緒に流し込んでいたりするのだ。

「冷こ「ナマエ。」」

「ごめんなさい…」

「よろしい、それで?」

「メガモンメン。」

「もう一度、言えるものなら言っ「メガモンメン。」」

大袈裟に溜息を吐いて、肩を竦めてみせるランスに対してナマエは少し面白可笑しく「フェアリータイプも頷ける」だなんて付け足すもんだから、またランスが眉を顰める。

「ナマエ、あなたねぇ…」

「ふふん。」

「ふふんって何ですか、ふふんって。」

「ランスさんの真似。」

「あああ、まったく…。本当に…。」

目玉焼きの黄身を最後に食べるのも、お箸は左手で持っているのも、いつの間にだか見慣れてしまった。

「あのさ…」

「何です?」

「やっぱり、これでいいんだと思う。」

「そう思えるなら、そうなんでしょう。」

私たち二人のウジウジとした気持ちはこの部屋の宙にでも浮かんでいたのか、立ち込めていたのかは知らないけれど、何時だかのスープの隠し味に紛れてしまったようだ。
舌触りが好きでないトマトすら、寝起きの機嫌は極めて宜しくないのを自負している彼が千切るだけとはいえども用意してくれるサラダに添えられているのだから、とっくに嫌いだなんてとてもじゃないけれど言えなくなってしまっていた。

(人生はうつくしきかな。)


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