崩れた屋根から上がる埃やらで煤けてしまった頬を今の状況では僕のジャケットも到底綺麗とは言い難いけれども、それでも袖で軽く拭ってやる。

「もう、駄目なのかなぁ。」

そんな、いつものお腹減ったね、だなんて他愛のない会話のように諦めを口にするもんだから危うく頷いてしまうところだった。
血の気の引いた唇を噛み締めているのがいたたまれなくて、けれど、明るいことを言える程に気を回せることも出来ず、僕も分からない、なんて言ってみせた。

何も確かなことなど何時だって僕等にはないのだ。ここだって、人が集まる今ならきっと長くはもたないのだろう。
それでも、伝えるべきはこの時なのだろうと軽く息を飲んで自分に言い聞かせる。

「いいかい、ナマエ…」

同じ訓練を受けてきたとは思えない、自分とは異なる痩せた白魚のようなナマエの小さな細い指を捕まえて絡める。
指きり、ピンキープロミス、僕には馴染みの無かった習慣。ナマエが教えた東洋のどこか切ないまじない。
どうか、僕の震えだけは伝わらないでくれ。

「僕と約束して欲しいんだ。」

「な、に…?」

「僕のことは忘れてくれていいんだよ。」

こう言えば、そうしようと意識してしまうことで逆効果らしいね。
本当かどうかは分からないけれど、知っていて言葉にしてみたのだから僕も相当に性質が悪い、これじゃあまるで、本当に呪いではないか。

ひゅっ、と細くナマエが息を呑み、僕を見上げる。
目線がぶつかったと思うと、それを拍子にぼろぼろと涙を溢すものだから困った。泣かせてしまうだろうなぁ、とは自覚していたし、いつも最期に見るのはコレだった。


天国はどこか、楽園はまだか

進撃はループ説があったので、それにあてられて。
周りよりいち早く死んでしまったマルコは、なんとなく世界の摂理か何かを自覚していそうな賢さがあったら良いなのお話。















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